■絵の好み 「怖い絵」 久世光彦■
2016/05/19
「だいたいビアズリーのサロメを好きだという女の人は、何となくそれらしい衣装をまとい、それらしい雰囲気を意識して漂わせているものだ。
逆に言えば、明るい笑顔の肥った女の人がビアズリーを好きだという話を私は聞いたことがない。
みんな誰でも自分に似合ったものを選んで好きになるのだ。
そしてそれは、単に外貌だけではなく、中身についても言えるのではないだろうか。」
少し前に仕事でお会いした女性から、「久世光彦さんの怖い絵、ってお読みになったことありますか?」と尋ねられた。
久世光彦のほかの作品ならいくつか読んだけれど、それはないと答えると、私が書くものと同じ匂いがしているから読んでみてください、と勧められた。
「怖い絵」をモティーフに物語がつむがれているのだが、確かに選ばれている絵が、私の好みと重なっていて(もちろん全てではないが)楽しかった。
同じ絵を見てもぜんぜん違うことを連想し、ぜんぜん違う物語が作られていることが楽しかったのだ。
以前は没頭していて、このところは遠ざかっていた絵の世界、画家の世界に舞い戻る機会が与えられて、久しぶりに絵などをじっくりと見ている。
すると以前好きだった絵がそうでもなくなったりしていることがあって、驚く。
冒頭の一文からすれば、これは自分自身の変化を物語ることになり、分析などしてみて、一人でなるほどなるほど、と感心して、今度、「絵画占い」、という本を書いてみようかな、と思う(うそ)。