ブログ「言葉美術館」

■東京暮色 「私の嫌いな10の人びと」 中島義道■

2016/05/19

51gm9wkahfl「たぶん、彼女はやはり遠いところをぼんやり見つめながら、ありとあらゆる解釈を拒否して、静かに死を迎えるように思われる。

彼女はこう生きたのであり、こうしか生きられなかったのであり、それがすべてなのです」

「わが人生に悔いはない」と思っている人が著者は嫌いで、そういう台詞を、きらきらっとした眼差しで普通に言える人々に「ドカンと大砲を打ち込む」ために、小津安二郎の「東京暮色」を持ってきている。

その部分を読んで、ぜひとも、映画が観たくて、私が好きなジャンルではないけれど、DVDを借りた。そして観賞後、再び、その部分を読んだ。

映画について語られた文章で、こんなに感嘆することは、ほとんどない。

荻昌弘の映画評論を読んだ時の感動を思い出した。

「彼女はこう生きたのであり、こうしか生きられなかったのであり、それがすべてなのです」

この一文には、人生そのものがある。

そんな風に感じて、それが頭から離れなかったから、夜のスーパーマーケットで、様々な人々を眺めながら、彼、彼女たちの人生に想いを泳がせてしまった。

どのように生きているのか、どのようにしか生きられないのか。

何のために、何を考えて生きているのか。

なかなか買い物が進まない。何度も同じところをぐるぐる回ることになる。信じられないくらい時間がかかる。

スーパーマーケットが現実味がなく、別の世界を漂っているようなかんじ。ふわふわと。

あぶないので、運転する時には、頭をぶるんぶるんと振って、現実に戻るようにしている。

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