■ほんとうは叫びたい 「プレヴェール詩集」■
2018/01/18
とても静かに飛ぶ鳥
血のように赤くて暖かい鳥
とてもやさしい鳥 ひとをからかう鳥
だしぬけにこわがる鳥
だしぬけにぶつかる鳥
ほんとうは逃げたい鳥
孤独な狂った鳥
ほんとうは生きたい鳥
ほんとうは歌いたい鳥
ほんとうは叫びたい鳥
血のように赤くて暖かい鳥
とても静かに飛ぶ鳥
それはあなたの心だ 美しいひと
ひどく悲しげにあなたの心がはばたくのだ
こんなに重くて白いあなたの乳房の内側で
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現実の身の無力さに絶望する夜は、『鳥さしの唄』にすがって、誰でもいいから、この詩を私の耳元で囁いて欲しい、と思う。
似合わなくてもうそでもなんでもいいから、と思う。
心のなかがどのように縦横無尽に動こうとも、それは、世の中を歩くために必要な価値として認められない。
四十を過ぎて何を言ってんだか、と頭ひっぱたかれそうだけど、顔のしわは増えても体力は衰えても、この部分だけが老成しないことにあらためて気づいた。