ブログ「言葉美術館」

■生の凡庸さにあらがう唯一の魔法■

 

「愛の悲劇的な側面は、無限の愛をひとりの人間に限定しようとするからこそ現れる。

私の周囲を見ると、誰もひとつの愛では足りない、ふたつの愛でも足りない。

私の知る女たちは、愛の足し算を続ける」

 アナイス・ニン、42歳のときの日記から。 

 私という人間がもってしまっている愛を、どうにもできなくて、もて余して、苦しくなると、アナイスにすがる癖はまだあるみたい。

 私が引用したのは、修正版の日記だから、おそらくこのような書き方になるのだろうけど、もっとも、愛の足し算を続けたのはアナイス自身。

 もうひとつ。

 43歳のとき、友人へ宛てた手紙から。

「死、老い、生の凡庸さにあらがう唯一の魔法は愛です」

 愛。

 ひとを愛するということ。この難しさ。

 愛するひとには幸せでいてほしい。自由でいてほしい。

 と私は願う。

 この願いと、私自身のくるいそうなほどのさびしさとの折り合いをどうつけたらよいのか、私にはまったくわからない。それで一週間も考えこみ、悩み、食欲を失っている。

 写真はおよそ2年ぶりに開催した路子サロンのために隣のお花屋さんで買ったカーネーション。

 マドンナというテーマに合わせて選んだ。部屋がブルーだから、ほかの色でもいいかな、とも思ったけれど、あまりにも美しくて。

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