■■「いいこと」と「悪いこと」と疑いをもつこと■■
2016/06/11
筒井康隆の『断筆宣言への軌跡』に、坂口安吾についてふれている箇所がある。
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安吾さんを論じるときによく言われるのは「悪」という問題ですね。
私は「悪」は昔から現在に至るまで文学上の重大なテーマであると思ってます。
常識的に悪いとされていることは本当に悪いことなのかどうか。
いわゆる「いいこと」とされていることは本当にいいことなのかどうか。
もしかするとその悪いことは非常にいいことかもしれないじゃないか。
誤解を恐れずに言えば、人殺しも含めてです。
そこまで原理的に考えるのが我々作家だと私は思ってます。
ただ、安吾さんはもうそういう認識、善と悪というふうに分けて考えるということすら、安吾さんの意識の中ではなかったのではないか、そこまで到達してたように思います。
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常識というものに疑いを抱かなくなったらおしまいだな、と思う。
疑いは歳を重ねるにつれて強まり膨張し続けているけれど、それを態度にあらわしたり、口にしたりすることはずいぶん少なくなった。
どんどん諦めているんだ、きっと。
だからせめて表現すべき場面ではするどく自分の疑いを表現したいと思う。
かなりセンチメンタルな朝を迎えたけれど、この本のおかげで、切り替えに成功。仕事をする。