■■ドゥルス・ポンテスの「涙」■■
2016/06/09
早朝からずっとドゥルス・ポンテスを聴いている。
ふだんは対訳を見ながら聴いたりしないから、あるものによってはタイトルさえ知らずに流していたりするけれど、なんというか、彼女のファドには、人生にたゆたうかんじがあって、人間の数だけ幸福のかたちの数があるようなことを思わせるものがあって、人はそれぞれに異なる存在なんだ、というかんじもあって、とても落ち着く。
なかでも「涙」という歌が好き。
大切な人を失って苦悩する内容だからたぶん、暗いんだろうけれど。
たとえば、ラストのフレーズはこんな詞(対訳:松田美緒)
「もしも 私が死ぬときに
あなたが 泣いてくれたと 知ったなら
あなたの涙 ひとつぶで
たったひとつぶの 涙で
なんと幸せに 逝けるだろう」
サガンもそういうことを言ったひとだった。
この歌には「絶望」という言葉が二回も強烈に出てくる。
「絶望して わたしは絶望して
心のなかで 自らを罰する」と。
それでも、絶望しても、もうだめだ、と思ったとしても、人はいつか疲れて果てて眠り、目を覚ます。そういうことの繰り返しです人生は。