■緊急事態下日記 ブログ「言葉美術館」

■緊急事態10日目。「これが常態」とUber Eatsとモッコウバラ

 

 緊急事態宣言の対象が全国に拡大され、東京都の感染者数、発表された数は一日最多の201人。

 自粛疲れはまだ早い、と都知事は言い、私は、もうとっくに疲れていますのよ、とこころでつぶやく。

 今朝は家族間でフェイク・ニュースについてのやりとりがあって、また考えさせられた。

 もちろん情報操作されていること、各国のコロナ対策、日本の対策にも、裏側でさまざまなことが絡んでいることは容易に想像できるけれど、いったいどこからどこまでが真実なのか、わからないとはいえ、自分の意見くらいは胸にひとつ、もっていたいと思った。

 そして、おやつタイムころ、休憩休憩、とソファにゴロンとしていたら、ふと、手応えある何かがおりてきた。

 緊急事態宣言そのものは、いつまでかわからないにしても、社会状況がコロナ以前に戻るまでには、相当の時間がかかるだろう、……ということは、いまこの状態が「常態」なんじゃないの。……ということは、いまこの生活を軸に、今後しばらくを考えなくちゃ。好きな人たちと会えない、タンゴもだめ。もうそれは続くよ、だから、たまには愚痴を言うのもありだけど、嘆くばかりでなく、そこを基本として、考えていかないと、なにより、退屈。そして私は退屈だけは、嫌。

 

 そして今日は、昨日のZoomに続き、初体験物語が。

 Uber Eats!

 これ、周囲の親しい人たちから止められていたのよね。コロナ以前。ますますひきこもりになるから手を出してはイケナイ、って。

 でも、私じゃないの。娘なの。ウーバーイーツで夕食とろうと思うけど、何か一緒にオーダーする? というお誘いがあったので、のっかっただけ。

 便利よね。あたたかくて美味しい食事が簡単にオーダーできるなんて(実際したのは娘だけど)。

 

 今日は朝から読み始めてしまったのが『HEROINES ヒロインズ』。ケイト・ザンブレノ著/西山敦子訳

 ケイト・ザンブレノは1977年生まれのアメリカの作家。

 2009年、32歳のときに作家デビュー。

『ヒロインズ』は著者のブログがもとになっている。

 この本は、ある意味でインパクトがかなりあった。

 だって、ケイトが登場させる女性たちが、ヴァージニア・ウルフ、ゼルダ・フィッツジェラルド、ヴィヴィアン・エリオット、アン・セクストン、シルヴィア・プラス、そして、アナイス・ニン!

 さらにケイトは彼女たちと自分を重ねる、あなたは私、私はあなた、みたいに。

 これって、そう、私がアナイス・ニンに対してそう感じているのとすごく似ている。このごろは、一時期に比べてずいぶん距離をとれるようになったけれど、でもやっぱり、アナイスは特別。

 

 アナイスは別としても、ケイトが重ねる女性作家たちはみな、精神を病んでいる。そしてケイトも精神を病んで心療内科に行ったりするのだけど、このあたりのことも、なんだかすごくよくわかる。

 彼女たちと同じようにすることで、より彼女たちに近づきたい。

 それがたとえ、現実世界に傷をもたらしても、かまわない。

 私が『マリリン・モンローという生き方』を書いていたときはまさにそうだった。

 それでもやはり、自己憐憫、被害者意識が、ちらりとでも見えると私は読むのがつらくなる。だから、無理なんだけど、マリリンの本、すっかり一読者として読んだなら、……つらいかもしれない。とほほ。

 それにしても。うーん。なんだろう、この感覚。

 『ヒロインズ』を読んだ、この感覚は。

 しばらく考えていた。

 たぶん、自分が以前に歩いた道、その景色をよく覚えていて、誰かほかのひとが同じ道を撮影したものを見たような感じ、なのかな。

 本を貶めているのでは、けっして、ない。ひとりの女の、本を書きたい、という叫びが満ち満ちているもの。

 そうではなくて、本のテーマが、いまの私にとっては、過去に見たもの、みたいだったというだけ。

 

 夕刻、読書でしょぼしょぼしてしまった目を休ませるため、近所を散歩した。いつも通らない道を、てきとうに歩いた。

 モッコウバラの美しい家があり、写真を撮った。

 ひとりでしばらく見惚れていて、それから、むしょうにさびしくなった。

 

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