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◆トルストイの言葉、映像の世紀、そしてボウイ

2017/01/18

20171116

 芸術って何ですか?

 って聞かれたら、なんて答えるだろう。小さな人たちに聞かれたらどんなふうな言葉を使って説明するのか。自分が試されているようなときに問われたら、どんなふうに語るのか。

 これまでに幾度となくそんな質問を受けてきて、そのときどきの自分の言葉でなんとか語ってきたはずだけれど、この手の質問への答えは、自分自身のなかみをどっとさらけ出すようで、力がいる。

 先日トルストイの言葉に、感じ入った。

「芸術とはなにか」でトルストイはこんなふうに言っている。声に出して読んでみると、胸にしみる。

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芸術とは、一人の人が意識的に何か外に見えるしるしを使って、自分の味わった気持ちを他の人に伝えて、他の人がその気持ちに感染して、それを感じるようになるという人間の働きだ。

芸術によって、同じ時代の人たちの味わった気持ちも、数千年前に他の人たちが通ってきた気持ちも、伝わるようになる。

芸術は、今生きている私たちに、あらゆる人の気持ちを味わえるようにする。そこに芸術の務めがある。

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 NHKの「映像の世紀プレミアム」第1集「世界を震わせた芸術家たち」の、一番最後に紹介された言葉だった。

 一流の文学者は自分の言葉をもっている、とあらためて感じ入った。

 この番組では、ジョン・レノンやオノ・ヨーコ、ピカソのゲルニカ、チャップリンなど幾人もの芸術家のなかに、デヴィッド・ボウイもいた。1987年ベルリンの壁でのコンサートの映像には、ものすごく強力な存在を感じた。

 絵画彫刻、文学、音楽、芸術にもいろんなジャンルがあるけれど、壁を超えて東ベルリンの人たちに、音楽を届けているその映像に、私はひとり呟いていた。

 結局、いちばんは音楽じゃないかな、と。

 だって、音は壁なんか関係なく伝わっちゃう。歌詞にはたしかに言語があるけれど、ミュージックだけなら、言語はない。クラシックがいい例だ。もちろん、「より多くのひと」に届くという意味でのいちばんなんだけれど。

 こんなことを感じたばかり、そのまんま書くのはいけないことかも。音楽がいちばん、絵画よりも文学よりも音楽、なんて。でも感じたことはほんと。

 この番組、第3集が「世界を変えた女たち」で、そこにマリリンがとっても強烈に紹介されていたので、何度も観た。ジャクリーンも、シャネルも出てきて、生き方シリーズみたい、とひとりで喜びながら。
 加古隆の音楽が、貴重な映像を根底で支え、色彩、温度を与えていて、とってもドラマティック。さいきんは加古隆のアルバムがお気に入り。

 おすすめです。オンデマンドで観られます。

第1集「世界を震わせた芸術家たち」

第3集「世界を変えた女たち」

 写真はいま公開中のデヴィッド・ボウイ「ジギー・スターダスト」の映画パンフの一ページ。私は、この方向におもいっきり音痴ゆえ、この映画によって、人生ではじめてボウイにふれたのでした。じわじわ染みてきている、そんなかんじのボウイ体験。

「ジギー・スターダスト」はこちらから。

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