ゆかいな仲間たち よいこの映画時間

◎1本目 『焼け石に水』 前編

み:映画は最近観てる?

り:最近観たのは、フランソワ・オゾン監督の「焼け石に水」。
これは何回か観ていてDVDでも持っているんですけど、改めて観てみようと思って久々に観ました。

み:いつの?

り:これは日本でオゾンが流行るちょっと前くらいなので。

み:じゃあかなり前だ。2000年フランスだって。

り:じゃあ結構前ですね。
これは高校時代の時に教わっていた国語の女教師に教えてもらった映画で。

み:国語の女教師って(笑)
好きなのか、好きじゃないのかよくわかんないけど、なにー?

り:割と変人な先生。
教員室の机の上の参考文献の中にフリークスの本が並んでいるようなちょっと変わっている先生だったんですよ。
その当時、オゾン監督の「8人の女たち」を観て好きだったっていう話をしたら、変な踊りをする面白い映画があるよって教わったのがその「焼け石に水」だった。

み:えっ、じゃあこれも変な踊りするの?

り:変な踊りします。ちょうどDVDパッケージが、変な踊りをしてる所なんですけれども。

み:面白そう。
「8人の女たち」もさあ、あれだけの大女優に歌わせて踊らせてっていう、それが面白い。

り:でも、変な踊りの割には、今こうやって改めて観ると、じっとりとした映画で、凄い良かった。
これを言ってしまうとネタバレになってしまうけれど・・・。

み:言わないで(笑)

り:言わないですが(笑)
今迄観た映画の中で一番好きなそのタイプのシーンがあるんです。

 

―後日、路子さんが「焼け石に水」を鑑賞―

 

み:2000年のでしょ? オゾンが何歳ぐらいの時のなんだろう。

り:若々しい時ですよね。フランス映画祭で本人を見た時に、あぁ老けたわ・・・って凄い思って。

み:いつ?

り:去年か一昨年。

み:来たの?なにで来たんだろう。

り:「危険なプロット」かな?(本当は「彼は秘密の女ともだち」)
これをフランス映画祭で持って来た時に、
「François Ozon Je t'aime(フランソワ・オゾン ジュテーム)」
っていうハートの形のメッセージカードを作って、渡した。

み:嘘!?(笑)じゃあ会ったの?

り:サイン会があって。

み:その時の団長は誰だったの?

り:その時は誰だったかな。

み:あんまり記憶にない?りきちゃんが好きな女優さんじゃない?

り:じゃないと思います。(なんて言いましたが、私の大好きな女優、エマニュエル・ドゥヴォスが団長でした。)

み:これは初期のでしょ?

り:そうです。最近のって割と洗練されて、ちょっと毒が抜けちゃった感じはあるけれど。

み:まあね。これは処女作にある、皆があるっていう、いろんなものが詰め込まれてる感じがするね。

り:しかも毒づいてる。

み:若者特有の。

り:棘というか。

み:そう、ちょっと投げやりな感じはあるよね。
りきちゃんが私にネタバレになるから言わないって言ってたけど、今思うと踊ってる割にはじっとりって。
これ一場面だけだもんね。踊りね。
ここだけちょっと、ふっ・・・てほっとするっていうか。
でもすぐ音楽止めちゃう、レオポルドが。
じめっとしてるって言ってたけど、じめどころじゃないよね?
まず、全編通してオゾンのまなざしが、彼は本当にこういうのを美しいと思ってるんだって。
彼らのヌードとか、姿・形とかを映像にぎゅうって撮ってるじゃない。
ブリーフ姿とかね、絶対トランクスじゃない。

り:ある!(笑)そうですね。他のを観てもそうですね。

み:ねっ。そうだよね。
でもこの映画だけを観ても、トランクス姿は一度も無く。
しかも、上着を着て、下はブリーフ。
っていうのが多分好きなんだと思うんだけど、どうかしら?(笑)

り:うん。
コートとか(笑)

み:あとフランツがキッチンにいる時も、赤だったっけ?
鮮やかな色の長袖のセーターを着て。

り:ブリーフ姿でね。

み:そう。寒くないかな?みたいな。
暖房がどうのこうのって文句を言ったりしているから、多分そんなにポカポカなおうちじゃないはずなの。
だけど、敢えてブリーフ姿で立たせるオゾンみたいな。

り:ふふふふ。

み:その不自然さも相まって、ああ好きなんだ、ブリーフ姿がっていうのと。
あとは最初、ぷって笑っちゃったシーンがあってさ。
レオポルドがフランツを誘うじゃない?
誘ってお互い手の内を明かさない一番最初のシーンあるよね。
こっちから観れば明確なのに、何で僕ついて来たんだろうみたいに言ったりして。
その中で、レオポルドが何かの拍子に立ち上がって、画面が股間のアップになるシーン覚えてる?ズボンなんだけど。
で、別にそこが盛り上がってるとかじゃないんだけど、「股間!」みたいな。

り:好き、オゾン監督。
だって「スイミング・プール」でも、やっぱり股間の、下から舐めるような股間のドアップ入ったりして。

み:ああ、好きなんだね。
あの映像って、電車の中とかでも私自身が。

り:そうですね。座ってて。

み:ちょうどくる。私も最近特に気を付けてるの(笑)

り:(爆笑)

み:まだ昔だったら、見られても嬉しいって思ってくれるかもしれないけど、今見てたら本当怖い人になっちゃうから、危ない人にならないように目を逸らすようにしてるんだけど。
あれって、目線がそこにいくじゃない、顔を上げてれば。
でもあれがいきなり出てきたから、あの時はぶっ!って笑っちゃった。

あとは、最初から惹き込まれた。
目を逸らすことが出来ない映画だなと最初から思って、この2人はこの後こうなるんだろうと。
最初のセックスの場面は、敢えて描かない。
場面が変わると、いきなりバスルームになるじゃない?
バスタブの中でフランツが、身体を反転させて、腕をバスタブにかける感じで煙草を吸う。その時に凄い良い笑顔をするんだよね。

み・り:満ち足りた!

み:本当に満ち足りた幸せそうな笑顔をするの。
これは本当に満ち足りたセックス特有の笑顔。
だから、知ってるな監督って思った。
あれは他の種類の幸せの笑顔じゃないんだよね。
物凄く良い時間を過ごしたんだなっていうのが、あの笑顔だけでわからなかった?

り:あっという間にそのシーンになるじゃないですか。
だからやっぱり印象的で。

み:あっ、全てが終わったんだな。
急に終わったって感じになる。

り:そうそうそう。
でも、あくる朝みたいな雰囲気で、一人楽しく、ああ良かったなって過ごしてるっていうのが一瞬で分かりますよね。

み:あそこ見事だよね。
で、これは凄い面白い映画なんだなって、あの時思った。その笑顔を見て。
この時はレオポルドが誘ってて、フランツが誘われてる方だから優位でしょ。
1回セックスしたら。

り:逆転しますよね。

み:一気に逆転になるという。男と女でも、男と男でも一緒なんだよね。

り:フランツの彼女のアナが来た時に、それと同じ事をしますよね。

み:そうなの!そうなの、そうなの。彼が残酷になるんだよね。

り:フランツがされた事をアナにしかえす。

み:そうなの。それで思ったのが、やっぱり組み合わせ。
一人の人間の中にいろんな多様性ってものがあって、いろんな自分がいるんだけど、誰と一緒かによって、自分のどの部分が出るかっていうのがある訳じゃない。
で、フランツはレオポルドといる時はSMの関係でいえばM的になって。
でも、アナといると逆。
同じ事をするっていうか、両方を持ってるって事でしょう。

リュディヴィーヌ・サニエって、この時ぐらいがデビュー?
もっと前から使われてるの?オゾン監督好きだよね。

り:オゾンのミューズって言われてますね。

み:脱ぎっぷりがいいよね(笑)

り:うん。どるんっ!っていう感じ(笑)

み:もう何か全然エロティックじゃないという。全然エロスを感じない。

り:「8人の女たち」の時とは全然違いますよね。

み:違う!最初分からなかったもん。似てるなって思って。

り:別人みたい。

み:あの子に似てるって思って、本人だったっていう。


み:レオポルドは全員に対して、彼だけはそんなに変わらない。
誰に対しても、変わらないで君臨してる。 こういうタイプの人をオゾンはどう思っているの? 好きなの? 自分がそうなの? そうされたいの? オゾンは誰に一番自分を投影しているの?

り:私は意外とヴェラに重きを置いているような気がしているんです。一番私が好きな人物。
周りを翻弄する男の映画って、この間の「ミューズアカデミー」もそうですけど、他の男性の監督が撮るそういう男の人って、イラっとするっていうのがありますけど、オゾン監督が撮ると、凄い皮肉っぽさが前面に出ているようで凄く好きなんですよ。
その違いって何だろうって思うと、オゾンも同じ事を思ってるのかなって。 こういう男はちょっと・・・みたいな。

み:ああ、あのステレオタイプの「ミューズアカデミー」の教授みたいな人でしょ?
何なんだろう、その二人の違いって。
これ、映画を両方観てない人にとってはちんぷんかんぷんだと思うけどさ(笑)
「ミューズアカデミー」の教授っていうのは、ダンテの神曲からベアトリーチェからずっとミューズを研究してるくせに、周りに一応ミューズを侍らしていて、何人かは夢中になっておバカさんになっちゃってるんだけど、観てる側からすると底が浅い人って感じがする。
「焼け石に水」のレオポルドは、同じように周りを翻弄するタイプ。
翻弄するタイプで決して良い人でもなく、勝手なんだけど、イラっとしない感じ。 その違いは何だろうね。

り:レオポルドの方が、貫き通す感じはありますよね。
「ミューズアカデミー」の教授は若干ブレる。
レオポルドは揺れないですもんね。 自我を突き通すというか。

み:やっぱり、こっちの方が戯画化されてるんじゃない? 「ミューズアカデミー」は、あれが現実なのよね。
でも「焼け石に水」は何らかの役割を担わされた役柄だから、やっぱりそこにはオゾンが目的を持って、何かを表現したいがために配置した役なんだと思う。
だから多分、ブレないっていう役なのかな。
だって最後さ、フランツが死んだ時だって全然動揺しなかったもんね。

り:跨ぎますからね。

み:跨いでたっけ!?

り:跨ぎますからね、死体を。

み:「出世前の男を跨いだら出世できない」って言うけど、死んじゃったから良いのか。
物語の中の王子様じゃないけど、キャラが確定されているって感じがするよね。

~今回の映画~
「焼け石に水」 2000年 フランス
監督:フランソワ・オゾン
出演:ベルナール・ジロドー/マリック・ジディ/リュディヴィーヌ・サニエ/アンナ・トムソン

-ゆかいな仲間たち, よいこの映画時間