MODEな軽井沢 特別な物語

◆エイジングとシワと美と◆2009.5.11

2020/04/22

先週、鷲田清一氏の『ちぐはぐな肉体』から山本耀司の言葉などを、ご紹介しましたが、同じ著者による『てつがくを着て、まちを歩こう』のなかにも、山本耀司を発見、目を止める箇所がありました。(単行本は2000年刊行)
414S4Y57WWL__SL500_AA240_.jpg

***

以前、ファッション・デザイナーの山本耀司さんにお会いしたとき、どんな女性に惹かれるかという話になった。彼は素肌に男性用のカッターシャツを一枚、無造作にはおった女性か、ほとんど銀色になった髪に葉巻をくわえている老婦人、といっていた」
(カッターシャツには注があって、「襟折りのある男物の長袖シャツ」とある)。

***

ふーん。
素肌に男物のシャツ。これは、20年くらい前に、けっこう流行っていたような気がします。もしかしたら、今も? わかりません。ただ、私は20年くらい前に、あまりにもいろんなところで、それを見聞きしたせいか、なんだか今は恥ずかしい。

さて。
ちょっと前ですが、久々にファッション雑誌を購入しました。
「エル・ジャポン」5月号。

そのなかに別冊で「エル・プリュス」なるものがあり、そのタイトルがなんと、「40代セレブは美しく進化する!」。タイムリーといえましょう。

記事全般を通して中心となっている思想は、やはり、
「どんなに年齢を重ねても、若いときと変わらない容貌を保つことが正義である」(注:私個人の解釈)
というものでした。

そんななかで、元スーパーモデル、イネスの写真があり、確か52才くらいで、年相応に老けいている、と思いました。それでいて美しい。
↓(ちょうどよい具合に、白いカッターシャツを着用してくれています)

↓こちらはアップ。けっして「シワひとつない肌」ではありません。

ところで。
鷲田氏は「若づくり」が嫌い。これほど「ひもじいものはない」と嘆きます。「人生の彩(いろどり)だけでなく綾(あや)も知りはじめた成人女性には、すぐにもその顔に綾をつくりだしてほしいものだ」と。

そして、山本耀司の言葉、「……ほとんど銀色になった髪に葉巻をくわえている老婦人……」に続けておっしゃいます。

そのひとが過ごしてきた時間、そのひとがひとりで送ってきた時間を深く浸透させている顔が、それがいちばんきれいだ。そのひとの過去のすべて、そのひとの存在のすべて、それを愛し、いつくしまないで、なにが愛だろうか

私は、こころから「その通りです!」と叫びたい。けれど、すぐに「だけど!」と続けたい。

まさに「若づくり」に精を出す年齢に突入していて、思想は鷲田氏に同感しても、どうしても「このシワ、すてきでしょう。私の人生の綾が出ているのよ」と、なれないのです。
昨夜も、北欧からやってきた秘薬(「ハリのある肌」にしてくれるというクリーム)を、ぐりぐりと塗りこんで眠りにつきました。

手術したり、よっぽど高級なあれこれの施術を定期的に受けない限り、どんなにクリームをぐりぐり塗りこんでも、加齢が勝ちます。シワが勝ちます。
けれど、なぜ、そんな抵抗を続けるのでしょう。
……。
それは、何もしないでいるのは、さぼっているかんじがして、居心地がよくないからです、私の場合。

ですから、このような努力に対するねぎらいがあると、とても嬉しい。そして、このような努力にかかわらず、それでもあらわれているシワなどに対して、「それも君の人生の綾だ、美しい」という言葉をもらったりしたら、感涙なのです。

***

「シワがいっぱいだってこんなに美しい!」
を知りたい方はぜひ、映画「デュラス、愛の最終章」をご覧ください。

38歳年下の恋人と過ごした晩年のマルグリット・デュラスを演じている、ジャンヌ・モロー。70歳を超えてなお可愛く、美しいその姿に、私は感動しました。

-MODEな軽井沢, 特別な物語