◆三宅一生、「日本人」と「おしゃれの出発点」◆2009.4.13
2020/04/22
「黒い髪、細い目という日本人のよさを忘れてはいませんか。おしゃれの出発点は、自分を知ること。そして、自然がいちばん美しい」
これは1970年の三宅一生の言葉です。
およそ40年後の現在、「黒い髪、細い目」の日本人は、絶滅寸前です。
私自身も、髪の色をあれこれいじり、マスカラ選びに真剣な日々を送っています。
自戒をこめて、ここに告白します。
さて。
前回は、庭園美術館の「フォルチュニィ」を紹介しましたが、今回は衝撃のフォルチュニィ体験、後日談ともいうべき内容になりそうです。
あれから私は、クローゼットをかき回したのです。
いわゆる「タンスの肥やし」はほとんどないのですが、どうしても目当てのものがみつかりません。
ここ10年ほど着ていないけれど、処分するはずがないもの。
それは三宅一生の「プリーツプリーズ」、ワインレッドのツーピースでした。
20代中頃から30代初めにかけてのシーズンは、頻繁に海外旅行に出かけていました。
ヨーロッパがほとんどで、旅行中、ちょっとしたレストランなどへも行くことが多かったので、プリーツプリーズは大変役に立ちました。
くるくるっとまるめてしまえば、本当に小さくなって、しかもシワの心配がいりません。
ベルギー、オランダ、フランス、イタリアなどなど各地を一緒に旅したものです。
それから時間が流れ、好みの変化もあり、海外からも気持が遠ざかって、「プリーツプリーズ」からもすっかり遠ざかっていました。
それが庭園美術館のフォルチュニィにふれて、突然、懐かしく甦り、ひさびさに着てみたい衝動にかられたのです。
けれどいくら探してもみつかりません。
あれこれと捜索し、実家の母の元にあることを発見、先日、なつかしい姿を目にしました。
季節的にもちょうどよいので、なんとか今現在の好みにアレンジして、着こなしてみたいと思います。
それにしてもあの頃、このツーピースが買えたのも、一流のデザイナーのものなのに、馬鹿みたいに高額ではない、ということがありました。
「お金をかけなくても楽しめて、大勢の人を魅了する服。うまいメシのような服を作っていくつもりです」(三宅一生、1970年)
ありがとう……。と感謝したいです。
数々の受賞暦があり、「世界的に有名な日本人」の筆頭にあげられる活躍を続けている三宅一生。
今、彼の言葉が突き刺さってくるのはなぜでしょう。
冒頭のセリフ、今一度。
「黒い髪、細い目という日本人のよさを忘れてはいませんか。おしゃれの出発点は、自分を知ること。そして、自然がいちばん美しい」
……。
「おしゃれの出発点は、自分を知ること」
この、いっけん、当たり前の言葉が、なにかとても重大なことのように思えるのです。
料理ではないけれど、「素材を生かす」ことをしていない人ばかりの世の中で、しかもそれがあまり美しくないからでしょうか。
*参:「世界のスターデザイナー43」