◆アニー・リーボヴィッツの美◆2009.4.20
2020/04/22
今、例えばファッション雑誌を開いたとしましょう。そして、ぱらぱらっとページをめくり、ため息が出るようなページで指を止めたとしましょう。
これはエリゼ宮の屋根の上の「カーラ・ブルーニ」ですが、この、私にため息をつかせたページができるまでには、さまざまな人が関わっているわけです。
モデル、ドレスを作った人、ドレスを選んだ人、編集者などなど。
そして、カメラを構えて「ため息の一枚を切り取った人」。
ちょっと前のことですが、一本の映画を観てから、ファッション雑誌に対する姿勢が変わってしまいました。
その映画とは『アニー・リーボヴィッツ~レンズの向こうの人生』
「世界で最も有名な女流写真家」のドキュメンタリー。
ほんとうに、ものすごく、興味深い映画でした。
ファッションが好きな人、写真に興味のある人はもちろん、一人の女性の凄まじい人生に触れられるという意味で、意識が高い人にもおすすめします。
この映画以来、私はファッション雑誌を見るときに、「写真家」のクレジットをチェックするようになりました。
アニーを有名にした一枚は、なんといってもジョン・レノンとオノ・ヨーコの写真でしょう。
セーターとジーンズ姿のヨーコに全裸のジョンが寄り添うという……。
アニーがその写真を撮った数時間後に、ジョンは暗殺されました。
「彼女は『魂』を撮りたがっていた。それが伝わった」(オノ・ヨーコ)
次に有名なのが、デミ・ムーアの妊婦ヌード。ものすごい論議を巻き起こしました。
「私は妊娠していた。アニーは私を後押ししてくれた。それで裸になったの」(デミ・ムーア)
ヴォーグ誌の編集長アナ・ウインターはこう言っています。
「アニーが表紙を撮るならニコール・キッドマンですら、その夜に来るわ」
2008年アニーが手がけた雑誌の表紙一例。↓
アニーという人は、シャーマンのようなふんいきで、独特ですけど、けっして美人というタイプではありません。
それでも、圧倒的な美があります。
それはおそらく人生に対する、毅然とした「視線」があるからでしょう。それは日常のなかで、あまり出会うことのない「視線」です。
「とにかく記録を残したいの。それで人生を見つめられる」
「死にゆくその日も写真を撮っていたい」
有名な写真の数々が、鮮やかな色彩で掲載されています。
『アニー・リーボヴィッツ~レンズの向こうの人生』のサイト。
参:ヴォーグ・ニッポン2008年11月号、2009年1月号