MODEな軽井沢 特別な物語

◆フェラガモ 夢の靴職人の忠告◆2009.2.16

2020/04/22

「夢の靴職人」と称えられたフェラガモが亡くなってから、50年近くが経ちます。
2月28日に公開される映画「オーストラリア」は、主演が二コール・キッドマン、40年代のファッションなども含めて話題を集めています。

この映画のアートディレクションを担当したのはキャサリン・マーティン。
彼女は衣装その他のデザインをてがける前に、決意していたことがありました。

それはサルヴァトーレ フェラガモに靴を作ってもらうことでした。

「ヴォーグ・ニッポン」のインタビューに次のように答えています。

「映画にとってパーフェクトな組み合わせが、サルヴァトーレ・フェラガモとのコラボレイションだったわ。
なぜなら、この映画のストーリーは1930年代から40年代に設定されていて、当時のヨーロッパ貴族やハリウッドスターがはいていたのが、フェラガモの靴だったから」

「当時から現代にいたるまで続いているブランドが存在しているということが本当にラッキーだったわ」

そうなのです。
当時のハリウッド女優たちは、こぞってフェラガモに靴を依頼しました。
フェラガモが作る靴は、女優の魅力を何倍にも引き出したからです。

たとえば、パンツルックが定番のキャサリン・ヘプバーンにはスポーティなウエッジヒールを。
セクシーなマリリン・モンローには11センチのスティレットヒールのパンプスを。
あどけないオードリー・ヘプバーンにはバレエ・シューズ風のデザインのを。
グロリア・スワンソンのイヴニングドレスに合わせて、パールをちりばめたハイヒールも作りました。
そして背の低い女優の希望からプラットフォームシューズが生まれました。

このところ流行のウエッジヒールも、プラットフォームもフェラガモが生み出したのです。
けれど、美しさを追求しながらも、フェラガモは靴本来の役割から離れることはありませんでした。

どんなに美しく独創的なデザインであろうとも、「フィット」しなければ、それははくべきではない、と言うのです。

「靴ははいた瞬間から快適でなければならない。はき慣れるということは絶対にない。
新しい靴をはいた十秒後も十週間後も十ヶ月後も、そのはき心地は同じでなければならない。
店を出る時点でフィットしていない靴は、その後もフィットすることはありえない」

これはフェラガモの、ほとんど忠告でしょう。

そのフィットの条件は、「土踏まずのアーチが足をしっかり支えてくれるかどうか」がもっとも肝心で、
あとは「つま先に少し遊びがあること」。

靴屋の店員はその靴がいかにすばらしいかは説明できるけれど、フィットするかどうかは、はいた本人でなければぜったいにわかりません。

「すこしでも合わないな、と感じたときは遠慮なく断って、次の靴屋に行きなさい」とすすめています。

……。

たしかに。
どんなにゴージャスな靴であっても、足に合わないと、歩き方が奇妙になって、すべてが台無しになります。

女は何度かの「痛い」経験をして、それを学ぶのです。
そして今も、街を眺めれば、「痛いこと体験中!」の歩き方をしている女性を発見することができます。

 参:「世界のスターデザイナー43」「ヴォーグニッポン 2009 3月号」

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