◆ヴァレンティノの「ハンカチ」マジック◆2009.2.9
2020/04/22
February 9, 2009
「ふだんは、他のデザイナーの服を着ている女性も、イヴニング(夜会服)はヴァレンティノなのよね。
きっと、特別な魅力があるに違いない。一度でいいから身にまとってみたいわ」
以前に、デザイン関係の仕事についている知人から聞いたことがあります。
そのときから、ヴァレンティノは私にとって、夜のイメージのひととなりました。
ヴァレンティノは言います。
「女性たちはよくこう言います。
『イヴニングドレスが欲しいならヴァレンティノに行きなさい』。
誰にも注目されなければ、外出することに何の意味がありますか?
ならば家にいることです!
家に友達を招いて好きなものを着ればいい。
けれども外に出て、ひと晩でもいいから美しく、たくさんの誘惑をうけて、セクシーでいたいなら、
『とっておき』の一着を選ばなくてどうします?」
1991年6月にローマで開かれたヴァレンティノのデビュー30周年を祝うパーティーには、世界のセレブ100人余りが集いました。
ほとんどがヴァレンティノの一着200万300万もする豪華なイヴニングドレスを着ていました。
その一人はヴァレンティノのドレスの魅力について、次のように語っています。
「最高に『優しい愛撫』なのよ」。
ヴァレンティノ・ガラヴァーニ。
まさに50年もの長き間、ファッション界の第一線に君臨し、世界でもっとも贅沢な女性たちを、エレガントに装ってきたデザイナー。
私が個人的に印象深いのはジャクリーン・ケネディが、大富豪のアリストテレス・オナシスと再婚したときのドレス。ヴァレンティノでした。
(ちなみに、夫のケネディ大統領が暗殺されたときに着ていたのはシャネル・スーツ)。
けれど、ヴァレンティノの言葉はとてもシンプルです。
「どんな女性でも、ぼくの服を着ていれば、みんなが振り向くように美しく見せてあげたいというのが、ぼくの願いだし、仕事だと思っています」
なかでも、私が一番好きな言葉はこれです。
「魅力を感じる女性とは?」という質問に対しての答えです。
「『なんにもない』ということで自己主張しているような極めてシンプルな服装の女性が好きです。
金銀のアクセサリーで飾りたてた女性よりも、ちょっとしたところで非凡なセンスをのぞかせている人のほうが、魅力的です。
たとえば、無造作にセーターを着た人が、すてきなハンカチをもっているような」。
はじめて、この言葉にふれたとき、「無造作に着たセーター」に似合う「すてきなハンカチ」を買いにいったものでした。
ヴァレンティノの美学を感じとれたようにも思えて、嬉しかったことをよく覚えています。
また、それ以来、ほかのひとが使っているハンカチに注目するようになりました。
驚いたのは、とってもゴージャスな服を着ている女性が、ぜんぜんすてきではない、よれよれのハンカチなどを持っているケース、けっして少なくはないのです!
……ちょっと周囲を観察してみてください……
そのヴァレンティノも、昨年、76歳でファッション界を引退しました。
最後のコレクションの最後、ヴァレンティノが登場すると観客は総立ちのオーベイションをおくりました。
もう一つ、私が好きなヴァレンティノの言葉を。
「思い切って余分を割愛していくこと。過剰のなかから、洗練は生まれません」
参:「世界のスターデザイナー43」「ヴィジョナリーズ」