★西洋絵画のスーパーモデル ブログ「言葉美術館」 路子倶楽部
★西洋絵画のスーパーモデル:6「セイレーン」
■水の精セイレーンの歌声は、官能の海で、魂を解放する■
一年が慌ただしくめぐり、また水の季節がやってきた。
夏。ひとびとは何を求めて海へと急ぐのだろうか。冒険、スポーツ、癒し、恋愛、快楽?
今回は海を意識して、セイレーンを選んでみた。ギリシア神話に登場する海の魔女である。
上半身は女、下半身は鳥の形をした怪物といわれるが、しばしば人魚と同一視される。
その甘い歌声で船乗りたちを引き寄せ、命を奪う危険な女。
サロメやリリスと同じように男を破滅に導く「ファム・ファタール(宿命の女)」として、さまざまな画家たちによって描かれてきたが、なかでも私はこの絵が好きだ。
エロティシズムの画家、クリムト の描いたセイレーン。
なんて妖しいその姿。くねった曲線、淫らな表情、水の抱擁に身をまかせながらも、その姿は実に挑発的だ。
さて、セイレーンを語るならば、その「歌声」に注目すべきなのだろう。なにしろ私たちがよく使う「サイレン」という語の語源でもあるのだから。
けれど私は、歌声よりもむしろ水、あるいは海そのものに注目してしまう。なぜなら、セイレーンのエロティシズムについて考えたとき、夏のギリシアの海、あの体験を思い浮かべてしまうからだ。
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ギリシアの小さな島、ミコノス島。欧米のヤング・エグゼクティブ・ゲイたちが好むリゾート地として有名な美しい島に「スーパー・パラダイス・ビーチ」がある。
私は2年前の夏、恋人とともにそこを訪れた。