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★西洋絵画のスーパーモデル:7「ユディット」

 

■妖艶な美しさで敵を欺いた高潔な未亡人「ユディット」

 

 気分は穏やかで、スリリングな恋、悪魔的な欲望、などといった言葉から遠いところにいる今日この頃。

 ユディットについて考えるのは少し気が重い。胸焼けしそう、と思いつつ、それでも重い画集を広げてみる。

***

 清楚な美女が大胆に太ももをさらしている。そしてその足が踏んでいるものは……なんと、髭に覆われた男の生首!

 美女の右手には剣が握られているから、彼女が斬り落としたものに違いない。けれど、それにしては穏やかすぎる表情。

 剣と生首がなければ、まるで足もとで彼女の幼児がたわむれているかのような、そんな姿だ。

 この美女が、ユディット。

 旧約聖書外典に登場するユダヤ人の寡婦で、敵の軍隊に包囲された自分の町を救うため妖艶に着飾り、敵の陣営にひとりでのりこむ。

 宴会の席で敵の将軍ホロフェルネスを誘惑、一夜を過ごし、彼の泥酔に乗じてその首を斬り落としたという、ユダヤ人にとっては勇敢で高潔なヒロインだ。

 ところで、「髭の生首とともに描かれた美女」といえば、もうひとり、サロメがいる。けれど以前、この連載でも紹介したサロメが、洗礼者ヨハネの首をはねさせた「残酷な悪女」であるのに対し、ユディットはあくまでも「高潔なヒロイン」。そして、高潔なヒロインのもつエロティシズムは悪女のそれ以上に、人々を魅了した。

 もちろん聖書では赤裸々に語られていない。けれど、ホロフェルネスとユディットの関係性はひじょうにエロティックなものとして人々を刺激したのだ。

 それは、おそらく次のような要素があるから、と私は考える。

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