◆サガンの絶対知性
2016/06/21
私の愛する作家フランソワーズ・サガンは、10年前の2004年9月24日に病気で亡くなった。69歳だった。
サガンのどんなところが好きなのか、「サガンという生き方」に、限界まで書き尽くしたつもりだ。
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サガンはスキャンダラスな伝説からは想像もできない繊細な神経と、絶対知性ともいうべき、多様性に富んだまなざしをもっていた。
人一倍傷つきやすく、不安を抱え、いつも考えすぎるほどに何かを考えていた。
彼女のまなざしは、人間そのものに向けられた。
社会的地位や属しているグループで、人を見ることがなかった。
彼女がもし履歴書のシートを作成したなら、そこに、どこの大学を出たとかどんな職歴があるとか、そういうことを書く欄を設けなかっただろうと思う。
サガンはあくまでも「そのひと個人」として相手を見た。
そしてその相手を知りたいと思ったとき、彼女は問いかけた。
どんな本を読んでいるのか、恋をしているのか、何を考えているのか、どんなことで幸福を感じ、どんなことで心引き裂かれるのか。
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こういうところがたまらなく好き。
「サガンという生き方」を生みだせたことは、たしかに私の人生の、幸福な出来事のひとつだった。
サガンの最後の数年、身体は弱りきっていた。
それでも彼女は、オンフルール郊外の館の、プルーストと同じ形のお気に入りのベッドで、お気に入りの赤いノートに小説の構想を書いていた。「死ぬまで私は書く」と言っていた
サガンの命日。今日は一日、この言葉から離れないでいよう。たくさん大好きな言葉があるサガンの言葉のなかでも、とくに好きなもののひとつ。
「唯一の道徳(モラル)は美にあるのです」