ブログ「言葉美術館」

◆生を引き寄せる時期

2016/06/25

___1コクトーの「占領下日記」に引きこまれている。
コクトーが50代前半のころの日記で、私が好きな人たちの名がたくさん出てくる、ピカソ、ドラ・マール、シャネル、ピアフ、ポール・エリュアール……。

読み始めてすぐに、芸術に携わる人たちの交友……、あの特有の濃厚な香りが古本から漂ってきて、私は自分が現在、何に渇望しているのかを知った。その感覚はほんとうに不意打ちのように突然襲ってきて、しかも強烈だったので、本を膝に置いて、しばらくその感覚が通り過ぎるのを待たなければならないくらいだった。

気の合う人たちと集いたい、というのとは違う。
美醜を基本テーマにした刺激的な会話のなかに身を投げ出したい。

コクトーの日記を読み進めるほどに、その想いは強くなった。

ただ、今の私はコクトーのこんな文章を引用したい気分。

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人生には、あらゆることが一度に押し寄せ、僕らに磁気を帯させ、生を引き寄せる時期が何度かある。

そして今のような沈滞の時期も。
ぐずぐずしてまだ取り掛かっていないあの映画の仕事が作り出している空虚感のせいかもしれない。

賭博の運と同じで、今の僕は人生から見放されている。

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ああ。メイ・サートンも似たことを言っている。「生活はかたまってやってくる」と。

人生には、沈滞の時期があり、生を引き寄せる時期がある。

大切なのは沈滞の時期を冷静に受けとめ、無駄に絶望しないこと。
休息、あるいはインプットの時期とみなして静かに生活すること。
生を引き寄せる時期にそなえて、エナジーを蓄えること。

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