◆ジュリエット・グレコ
2019/03/25
ジュリエット・グレコとマイルス・デイビスの恋を扱った、2012年の番組を観る機会があった。
当時85歳のグレコがインタビューに応じていた。
現在は87歳になるグレコの来日コンサートが先月、渋谷の文化村であった。
迷っているうちにチケットが売り切れてしまった。
このインタビュー、短い時間にグレコの魅力があふれていた。
「今も恋をしていますか?」
という質問をされて、彼女はウイ、ノンだけではなく、恋愛について語った。
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「私? 私は恋をしているわ。愛がなければ死んでしまうもの!
愛さなければ生きていないのと同じ。
もし愛が存在しないのなら、この盲目的な感情・・・・・・、美しいものは一層美しく、そして醜さは和らげるようなこの何か・・・・・・、「愛」というものが存在しなければ、生きる意味もないの。
愛とは献身、自己の忘却。
人生が私たちに与える一番素晴らしい贈物なのよ」
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グレコは「愛さなければ生きていないのと同じ」と言った。
「愛されなければ生きていないのと同じ」と言う人もいる。
私はどちらだろう。もちろん欲張って両方なんだけれど、とっさに出てくるのはどちらかな……。
それにしても、「恋をしていますか?」と尋ねられて、ここまでのことを穏やかに朗らかにキュートに、一度でいいから、言ってみたい。
ここで、恋と愛は違うのに同じように語っている……などと言いたくもなるけれど、翻訳のこともあるから、自分なりに心におとす。
あといくつ、どんな出来事を経験すれば、このような言葉を獲得できるのか。
そんなことを85歳の美しいジュリエット・グレコを見ながら思った。
そしてグレコのまなざしから、この美しさの根底にあるものはやはり強さなのだと感じとった。
グレコが言うように、愛って、美しいものを、さらに美しく感じさせるもの。
だから、もしそうじゃなかったら、一度疑ってみないといけない。