ブログ「言葉美術館」

◆オノ・ヨーコと人間の真価◆

2016/06/21

Img_14322008年放送、とあったからもう7年も前、私がまだ軽井沢で暮らしていたころだ。

2008年放送のNHK「ジョンとヨーコの祈り ~イマジン・ピース・タワー~」という番組の、再々放送を観た。

オノ・ヨーコには、ずいぶん前に強い興味をもち、彼女の本「ただの私」を何度も読み返したものだった。

それでも私はビートルズへの興味が薄かったから、それ以上に入りこむことはなく、実に久しぶりにオノ・ヨーコの姿をじっくりと観た。

オノ・ヨーコ、いま82歳。この番組が放送されたときは75歳。

すごかった。なにがすごいって、まったく老化を感じない。もちろん肉体の老化はある。けれど精神の老化を、まったく感じなかった。

私が思う「精神の老化」って、美しいもの、美しいことに鈍感になること。

彼女はおそらく自分がしたいこと、すべきだと信じることにまっすぐ突き進み、そのことで傷つく人もいて、世界中を敵にまわしたこともあった。それでも彼女は自分の生き方を変えなかった。

番組では、アイスランドに建設された「イマジン・ピース・タワー」完成までを追っていた。

まだまだやりたいことがたくさんあるという。あと50年はほしいですね、と言う。

同じ女性……、いいえ、同じ人間とは思えなかった。オノ・ヨーコの姿、彼女が確実に形にしてきたもの、確実にしてきたことを思うと、自分の小ささ非力さが悲しかった。

でもオノ・ヨーコと比べて悲しんでいてもどうしようもないから。

ブラウニングの言葉、「人間の真価はその人が死んだとき何をなしたかではなく、その人が生きていたとき何をなそうとしたかにある」を心で繰り返して、「自分はいま、何をなそうとしているのか」と今一度、立ち止って考えて、それから歩きたい。

最後のほうでオノ・ヨーコは言っていた。

自分が好きというのではなく、もちろん嫌いじゃないんだけど、好きっていうのとは違って、「これだけの苦難を超えて、年齢を重ねてきた自分が愛しい」のだと。

インタビュアーの人はきっと若かったのだろう、あなたくらいの年齢ではまだわからないと思うけど、とそんなふうにつけ足していた。

「自分が愛しい」というその言い方が、とても優しくて、オノ・ヨーコの自分に対する優しさに私は胸をうたれた。

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