◆微笑みだけでは 嘘みたい
2016/06/21
黒川泰子×サエキけんぞう。
ユニークな組み合わせのライヴに出かけた。
黒川泰子さんの歌は、いつ聴いても、絶対的な歌唱力があり、そこに彼女のやわらかな表現力が加わって、そう、いつ聴いても、ゆったりと安心して、感動に身をゆだねられる。
絶対的な歌唱力、……なんて、ここで専門家でもないのに確信をもって言えてしまうそのこと自体が、もうほんとうにすごいのだと思う。
サエキけんぞうさんはゲンズブールの歌を彼自身の、原詞に忠実な超訳で歌った。
それがとてもよかった。
彼の言葉の選び方を私はとても好きだと思った。音楽の才能と文学の才能、ふたつを併せもつと、こんなことができるんだ、と憧れながら私は集中していた。才能プラス深いゲンズブールへの愛情、 =もうこれは最強ね、なんて思いながら。
と、そのとき、ワンフレーズが胸に突き刺さった。
「微笑みだけでは 嘘みたい」
このフレーズはあらゆる障壁を乗り越えて、そう、私の、傷つかないように傷つかないように自衛している部分に突き刺さった。
私はどっと感情があふれて泣き伏したかった。
微笑みだけでは 嘘みたい。
恋人たちの別れ、別れを客観視できてしまっているゆえのしずかな絶望、別れを受け入れるしかないという予感。
もう時が過ぎてしまって、終わることしか残されていない状況を、短い言葉でパーフェクトに表現している。みごとだった。あまりにもみごとだから、こんなにせつなく悲しく私に刺さったのだ。
朝からバルバラとバーキンを聴いている。バルバラはお店の名前から。バーキンは、もちろんゲンズブールを感じるために。