◆その言葉を「誰」が言ったか
いま、フランス語ができるお友達に頼んで、大好きなジュリエット・ビノシュやカトリーヌ・ドヌーブのインタビューなんかを翻訳してもらっている。
語学が日本語以外は何一つできない。という強烈な劣等感は、ここまでくると、もはや、これは私の性質だわ、と思わざるをえないような状況。大好きな人の言葉を、ダイレクトに受け取れることができる彼女が、私はほんとうに羨ましい。
それで、今日はものすごい発見をしてしまったので、ここに記しておこうと思う。
彼女が送ってくれた資料とともにyoutubeであれこれ観ていたら、ジェーン・バーキンの映像があらわれた。
彼女が311の直後に日本を訪れたときの映像だった。
彼女が311の直後に日本を訪れたときの映像だった。
しわくちゃで老いている彼女は65歳。自然の老いがそこにあった。
さらにyoutubeに導かれるままにバーキンの映像を観た。そうして、ぐっと胸うたれる場面に出会った。
それはバーキン62歳のときのインタヴューで、いろんなことに答えてゆくなかで、「好きな言葉は?」という質問に、彼女は、「Tommorow is another day」と言った。
マーガレット・ミッチェル「風とともに去りぬ」のヒロイン、スカーレット・オハラの有名なセリフ。
バーキンは笑顔で続けた。
「うまくいかないときは自分にそう言い聞かせないといけないの。次の日がもっと悪くなる場合もあるけど、でもいいのよ。この言葉を自分に言い聞かせて、なんとか夜を乗り越えないと」
私は、バーキンに抱きつきたかった。
あなたのようなひとでも、「Tommorow is another day」って自分に言い聞かせながら、なんとか「夜」を乗り越えようとしている、そんなときがあるのですか?
私も、私も、おなじような言葉を言い聞かせて、なんとか夜を乗り越えようとしている、そんな夜がたくさんあります。
PCを閉じて、鏡に向かってメイクをしながら、バーキンのしわを思い出しながら、このしわも、このたるみも、それがいい、と思ってくれる人たちと一緒にいればいいんだろうな。あるいは、このしわやたるみに人生が刻まれていればいいんだろうな。日本という国では、そこに立ち続けるのは難しいけれど。なんて考えて、さらに、あれこれと考えを泳がせながら、それにしても「Tommorow is another day」と好きな言葉だと言えるバーキンってすごいな、と思った。
だって、これ、いわゆる、ありがちな言葉、ってものではないでしょうか。
日本でもいろんな人がいろんなところで言ってそうな気がする。
私が息をしにくい世界でも使われているような気がする。
そうよ、「彼女」とか「彼」とか、いかにも好きそうな言葉だわね……。と何人かの親しくない人たちの顔を思い浮かべて、それから、冒頭に書いた「ものすごい発見」をしたのだった。
そうです。みなさんもうお気づきの通り、言葉は言葉として、それはそれは大切です。しかし、それと同じくらいに、その言葉を「誰」が言ったか、ということもかなり、大切なのです。
え。当たり前ですか。
そう、当たり前かもしれない。でも私はすごくはっとした。
「言葉」というものは、それを発した人と切り離しては考えられない。例外もあるように思うけど、基本的にはそうなんだ、とあらためて、深く感じ入った。
それにしても、「Tommorow is another day」って自分に言い聞かせながら、なんとか「夜」を乗り越えようとしている、って涙をさそう。
うまくリンクできるかな。映像はこちら。
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