■情熱です 「不実な美女か貞淑な醜女か」米原万里■
2016/05/22
「そして、通訳にとって、最も必要とされる素質とは、二つの言語にまたがる正確な知識や、柔軟な両語の駆使能力もさることながら、
話し手の最も言いたいことをつかみ、それをどんな手段を講じてでも、とにかく聞き手に通じさせようとする情熱なのではないだろうか」
情熱。
この箇所を読んだ瞬間、「やっぱり!」と声をあげてしまった。
ロシア語の、カリスマ通訳といわれる著者のエッセイは、飛ばし読みが不可能なほどに面白く、「この人のものの考え方、私、好きだ」と思いつつ、読み終えるのが惜しいからゆっくりと読み進めていったのだが、後半、「情熱」のくだりにふれて、深く納得した。
そうなのだった。
このエッセイの帯には「同時通訳の内幕初公開!」とあるけれど、そして、笑える失敗談なんかも数多く紹介されているのだけれど、根底にずっと流れているもの、それは彼女の「コミュニケーション」、そして「言葉」に対する、驚くほどに熱い情熱なのだった。
このような本にめぐり合えて幸せだ、と心から思えた本だった。