ブログ「言葉美術館」

■言いたいこと 「未完の告白」ジッド■

2016/05/22

Gi心にかかる問題を言いだしもできずに、時計の長針にこの一点を通り過ぎさせてしまうようなことがあれば、私は自分が臆病者であるということ、一生自分を信用できなくなるということを、知らねばならないのだ」 語り手の少女が、ひとりの男性を前に、自分にとって重要な問いを投げかけようとしている。 けれど、なかなか言い出せず、自分に勇気を与えるために、「赤と黒」のジュリアン・ソレルを真似して、心の中で繰り返すセリフ。 それほど大きな問題ではなくても、言いだすことがなかなかできずに、自分に苛立つことが少なくはない私にとって、これは呪文としたいセリフ。 「それ」を言いだせなかったとき、「それほどのことではない、些細なことだったのだから」と自分を慰めるけれど、「なぜあのとき言えなかったのか」を、けっこう長くひきずるのは、言えなかったことの内容の大小ではなく、「言おうとしていたにもかかわらず言えなかった自分」がうとましいから。 そして、そんな体験を繰り返せば、しだいに、けれどたしかに、自分を信用できなくなってくる。 ジッドが「私は再読されるために書く」と言っていたこともこの本ではじめて知った。

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