■とても生きている 「めぐりあう時間たち」 マイケル・カニンガム■
2016/05/22
「THE HOURS」という原題の、映画はもうたぶん10回は観ている。
特別な映画。その原作、読むのは二度目。
主人公のひとり、クラリッサ(50歳前後?)がルイスという友人と会話しているときの、彼女の心情。
「クラリッサは不意に、自分の人生のありったけをルイスに見せたくなる。ルイスの足許の床の上にそれをぶちまけたくなる。
物語として語ることのできない鮮明で無意味な瞬間、瞬間を。
ルイスといっしょに座って、人生をふるいにかけたいと思う」
……人生をふるいにかける……
私の人生をそうしたら、ふるいの上に残るものはいったいなんだろう。
幾人かのひとたち? 幾冊かの本?
ここに登場する三人のヒロインはたまらなく懐かしく、たまらなく愛しい。
自分自身を人生から棚上げせずに、本人はそれを望んではいないけれど、彼女たちの気質のせいで、とても生きている、と思うから。
だから生きることに激しく頼りなくなったとき、これで何度目だろう、と思いながら、映画を観る。今回は原作を再び読んでみようと思い、胸に響く言葉が拾えた。