ブログ「言葉美術館」

■交友録 「パリの男たち」 朝吹登美子■

2016/05/19

Pari「詩人は死によって、全き自由の、反対側の世界から第一歩をふみ出す」

ジャン・コクトーの最期の言葉。

1963年、1011日。エディット・ピアフが朝の8時40分に亡くなった。ジャン・コクトーはこの知らせを正午頃に聞いて、「惜しい友だちを失った」と言った。そして、「昨夜熱が三十八度もあって悪寒がして眠られなかった。今日がこの世の最後の日だ」と家人に言った。そして、午後一時過ぎに、亡くなった。

(注:「パリの男たち」による。ピアフが亡くなったのは10日だと言われている)

シャネルも、そういえば、「私、確かだわ、人はこのように死んでいくのよ」と確信して亡くなったのだった。

「パリの男たち」は、朝吹登美子の、華々しい交遊録であるけれど、それだけではない、日常のなかでふとすれ違った、いわゆる無名の男たちも登場し、私は須賀敦子を思い出した。

1965年に講談社から刊行され、長らく絶版になっていたものを、人文書院が再刊。再刊は1978年のことだ。

本って、生まれて、それから姿を消して、再び生まれ変わったりするのだ。そんなことにへんに感嘆した。

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