■個性の消滅 「ユニコーン」 アイリス・マードック■
2016/05/19
「彼は時々自分がマックスに恐れの感情を抱いていることに気がついた。
彼が恐れるのは老人の悪意でも、批判でさえもなく、ただマックスとの接触によってなんとはなしに自分の個性が消滅して行くことだった」
マックスは「彼」にとっての恩師にあたる人物。
「彼」がマックスに対して抱くような感情を、ある人に抱くことは、私にもあるかもしれない。
いま、特定の誰かの顔が思い浮かばないのは、たぶん、私の場合は、その時々の自分と相手の気分の波によって、それが訪れるから。
もちろんそうなりやすい人とそうでない人というのはいるけれど、ときおり、話している相手に「恐れの感情」を抱き「自分の個性が消滅して行く」感覚を味わうことがある。
そして、ときによって、それをうとましく思ったり、自己嫌悪したり、個性が消滅してゆく感覚に自虐的な快楽を味わったりする。
そして、いつものように、他者と自分との「組み合わせ」に考えが泳いで、窓いっぱいに広がる緑の葉と秋晴れの朝の空を眺めながら、もしかしたら、この組み合わせというものも、個と個だけでは測れない、その瞬間の、互いの「気分の波」が強く影響するのかも、と思う。