ブログ「言葉美術館」

■大庭みな子■「女の男性論」

2017/06/12

「欲望にまつわる哀しさや歓びを知らない人間は魅力がない。

美食をしたこともなければ、飢えたこともない人間は殺風景なテーブルに肘をついて殺風景な話しかしないものである

 

性的なものの中で多くの人格が培われる。

 

尊敬、愛情、闘争、克服といったものを自然な形で修得する。性的なものに熱中できない人間はあらゆる情念に不感症である場合が多い。」

 

27年前に刊行された本なのに、新鮮どころか、時代の先を行っている、と思わせるエッセイ集。大切な本の一つ。

 

これを読みたくなったのは、自分のやり方に、かくん、と自信がなくなって、迷ってしまいそうになったから。

 

冒頭に引用したのは、「幸福な夫婦」というエッセイの中の一部。

今回は性的なもの……云々についてよりも、「欲望」を扱った一文に、うたれた。

欲望にまつわる哀しさや歓びを知らない人間は魅力がない。

欲望欲望欲望

親しい友から、さいきん言われた言葉。

けっきょくのところ、あなたは人間の欲望というものに関心が集中しているのね。それでそれを他人の言動ではなく、自分自身を通して知ろうとしているのね。

 

そう。でも、ときおり、ばたっと倒れそうになる。ぜんぜんそんなのと違うところに身を置きたくなる。けれど、いつもいつも舞い戻ってくる。やっぱり生きる場所はここしかない、といったかんじで。

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