■魂の武器 「夜と霧」 フランクル■
2016/05/19
「ユーモアも自分を見失わないための魂の武器だ。
ユーモアとは、知られているように、ほんの数秒間でも、周囲から距離をとり、状況に打ちひしがれないために、人間という存在にそなわっているなにかなのだ」
なにかの拍子で、突然に深い森の中に迷い込んでしまったとき、「夜と霧」を読みたくなる。
いくつもの箇所にラインが引かれ、書き込みがなされたこの本に、いままで、いくどなぐさめられたことか。
今回は、ユーモアについて述べられた箇所がぐっと胸にしみた。
「ユーモア」。
これはつねに私のなかで、重要度において、高位にランクされているけれど、深い森の中に迷い込んだときには、私の体内に身を潜め、その存在すらないかのようになる。
森の中で迷子。
この気分は、ようするに周囲との距離を失い、状況にうちひしがれていることから生じるのだ。
そのときは、わからないけれど、後になっていつもそう思う。
いつもいつも太陽の方を向いて歩いていけたらな、と思うけれど、四十年生きてきて、そうはできないのだから、受け入れるしかない。
ちあきなおみが歌う「夜へ急ぐ人」を聴いて、胸が熱くなる性質なのだから。「かんかん照りの昼は怖い。正体あらわす夜も怖い」って彼女は歌う。