■「Icon 伝説のバレエ・ダンサー、ニジンスキー妖像」 芳賀直子■
2016/05/19
「紛れもなくこれは天才だった。まるでそれは恍惚であり、ほとんど神技に近かった」(チャールズ・チャップリン)
ニジンスキーの名前は、ロシア・バレエを率いたディアギレフとともに、知ってはいた。
ジャン・コクトーやシャネルのあたりをうろうろしていると、かならず登場する人だったから。
けれど、こんなにも彼の姿が私のこころに迫ったのは、昨日が初めてだった。
チャップリンの言葉は、おそらくニジンスキーの魅力をどんぴしゃに言い得ていると思う。
「まるでそれは恍惚であり」……これと同じ感覚を私は知っている。
マリア・カラスのコンサートフィルムで、それから最近毎日のように観て感涙しているエディット・ピアフのコンサートフィルムなどで、体感しているから。
神技とまでは言わない。けれど一瞬でもいいから「まるでそれは恍惚であり」という感覚を文章で、感じさせたい、などと不遜にも願った。
それにしても、この本は、読む(観る)側の私たちに、きちんとニジンスキーと向き合うことを余儀なくさせる。
私はこの本に出会って、世の中にいかに多くの「余計なキャプション」というものが存在するのかを知った。