■中田耕治■「吉行淳之介の言葉」
2017/05/26
『エロス幻論』。
「人間には、芸術に無縁の人種と、芸術によってしか生きてゆけぬ人種とある。
前者は決して悩まず、うしろを振返ってみることなく、ダイヤモンドのように頑丈な心を持った人たちである。
後者は、そういう人種を軽蔑すると同時に、そういう人種になりたい憧れを持っている人たちだ。
しかし、いくらあこがれても決してそのようにはなれず、ぶつかり合えば、傷つくのは必ず後者であるが、傷つくことを最後には芸術のための肥料にする強靭さは持っている」
これは吉行淳之介の言葉。「トニオ・クレーゲル」の一節を彼自身の言葉で紹介した箇所だという。
昨日、久しぶりに会った方と同じ言語で3時間以上おしゃべりをして、内容が似通っていたので、彼女に紹介したかったけれど、どこで読んだか忘れていて言えなかった。
それをいま突然に思い出し、読み返して、ラストの1行の重要さを再発見。