■ただそれだけでいい 「命の器」 宮本輝■
2016/05/19
「私を溺愛し、どんな人間でもいい、ただ大きくなって欲しいと念じつづけてくれた人がこの世にあったということを、筆舌に尽くしがたい感謝の念で思い起こすのである」
胸をつかれた。
随分昔のこのエッセイ集を読み返すのは、もう三度四度目くらいなのに、自分のなかの迷いをなんとかしようと本棚から取り出して、読み始めて、今回はこの部分にしみじみと感じ入ってしまった。
本来そうでありたいし、そうなのだ。
なのに、私はなんと余計なものを、求めていることだろう。
雪がふったり、ぽかぽかしたり、気まぐれな軽井沢に翻弄された春休みが終わった。