■苦悩をつきぬけて 「ベートーヴェンの生涯」 ロマン・ロラン■
2016/05/19
「無限の霊を持っている私たち有限の人間どもはひたすら悩んだり喜んだりするために生まれていますが、ほとんどこういえるでしょう――最も秀れた人々は苦悩を突き抜けて歓喜を獲得するのだと」(ベートーヴェン)
ベートーヴェンにすっかり夢中になってしまったのは、いま書いている作品のために必要だったからだけではない。
ずしんと、我が身に響くものを、この偉大なる芸術家がもっているからだ。
ロマン・ロランは情熱をもってベートーヴェンを書いている。
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「不幸な貧しい病身な孤独な一人の人間、まるで悩みそのもののような人間、世の中から歓喜を拒まれたその人間がみずから歓喜を造り出す――それを世界に贈りものとするために。
彼は自分の不幸を用いて歓喜を鍛え出す。
そのことを彼は次の誇らしい言葉によって表現したが、この言葉の中には彼の生涯が煮つめられており、またこれは、雄雄しい彼の魂全体にとっての金言でもあった――
『悩みをつき抜けて歓喜に到れ!』
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苦悩をつき抜けて歓喜に到れ!
これが私のこの夏のテーマ。
頭から離れない。
何かの拍子に、まるで、生活の合いの手みたいに、この言葉が頭に響く。
このところは各地で猛暑。軽井沢も暑いようで今日も最高気温が29度なんてラジオで言っていた。
けれど日中、家のなかにいれば、汗をかかない。我が家はよっぽど暗い、いえ、涼しい家なのだろう。そんななかで、『運命』を大音量で流す。