■アナイス■「インセスト」
2018/01/20
「いつも。私を窒息させるのは、そうあるべきだという理想なのだ。」
アナイス・ニンの日記!
待望の本。
宝物の本が一冊増えた。「読み終えるのが惜しい」と痛切に感じる本。大切に一読し、それからもう何度も読み返した。
出版社と訳者の杉崎和子さんに、拝みたいくらいに感謝している。(きっと「軽井沢夫人」も大喜びでしょう)
何度も「アナイス・ニン節」ともいえるフレーズがあり、ぞくぞくした。冒頭のはその一つ。もうすこし厚く引用すると次のようになる。
「ロマンティックで古い人間の私は、そこに宿命を感じ、強い力を持つ過去を棄てられずに、動きが取れないでいる。
たとえ二人の芸術家が新たに誕生するという大義があっても、人間一人を葬り去るなんて、できるはずがない。
際限のない自分の善良さに、私は慄然とする、
私は自分のためには生きていない。
動きを封じられ、自己犠牲を続ける私は、いつも境界線の上で凍りついている。
いつも。私を窒息させるのは、そうあるべきだという理想なのだ。」
(「人間一人」は夫のこと、「二人の芸術家」はアナイスと恋人のヘンリー・ミラー)
他のアナイス・ニンの著書でも感じてることだけれど、杉崎和子さんの言葉の選び方が私はとても好きだ。そして「解説」も大好きだ。
ひとつの物語をこねくりまわしていたら、いつの間にか梅雨入りしていた。
雨に濡れた緑が、おそろしいくらいに鮮やかです。