◎Tango ブログ「言葉美術館」

■中山可穂■「サイゴン・タンゴ・カフェ」■

2017/08/10

「過剰な愛はいつだってたやすく過剰な憎悪にすりかわるものだから」

一般受けはしないけれど一部の熱狂的ファンを持つ作家が、これまでとは違う形の小説を書いて、それが世間的な評価を受け、一方で熱狂的なファンから激しく抗議されたときのことについて語った言葉。

一方通行の愛の場合は特にそうだ。これは恋愛に限らない。血縁関係にあるもの、友人知人……。

過剰はよくない。

自分が過剰にそれを抱くことを常に警戒しているせいか、私は少し足りないくらいの女になりたいと思うことがある。

愛情のあれこれ、いろんなものが足りない、そういうひと。

大好きな中山可穂。待望の新作は、タンゴのリズムのなか紡がれた五編からなる小説集。

表題ともなっている五編目の作品が、とてもよかった。心が熱くなった。


そして五編目の作品を読んで、それまでの四編が違った色彩を帯びてくるという仕掛け(これは私が勝手にそう受け取ったのかもしれない)に、しみじみと感じ入った。

昨日は軽井沢も日中は十度を越え、へんな春陽気。冬から春への移行期、私が一年のうちでもっとも嫌いな季節。

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