■■あの日の、ピアソラ■■
2017/08/10
音楽との出逢いにも、たしかに「とき」があって、なんとなしに流していた曲が突如として特別になる瞬間というのが、ある。
あの日のピアソラ。
アディオス・ノニーノからムムキ、ブエノスアイレスの夏、チンチン……、そしてリベル・タンゴで、かんぜんに溺れた。ソファにしがみついてふるえをとめないとどうしようもないほどだった。
ずっと前にこのCDをプレゼントしてくださった殿方。
そのときも御礼は伝えたけれど、いま、それとは別の意味を込めて、深くありがとうと伝えたい。いつも貴方は私に必要なものをくださいます。
思い立って、中山可穂の「サイゴン・タンゴ・カフェ」を読み返した。
そしてまた胸をうたれた。
帯には「優雅にタンゴを踊りながら、このつらい世界を生きのびてゆこう」とある。
同じ種類のひとでなければ、出てこない言葉だ。私の場合は「ピアソラを聴きながら、このつらい世界を生きのびてゆこう」になるかな。
外は静かに雪が降っています。
なんちゃって暖炉のペレットストーブの炎が恋しくなります。炎があるとまた別のものが恋しくなります。そういう季節です。