ブログ「言葉美術館」

■そういう瞬間 「本格小説」 水村美苗■

2016/07/01

6170me0181l「ただ人間には自分が知っている以上のことを知らずして知ってしまう瞬間があり、あの瞬間がそういう瞬間だったのにちがいありません」


やっと見つけた。

さいきん「本格小説」のことが話題にのぼって、けれどぶ厚い上下巻で私はそれを図書館で借りて読んだから手元になく、でもすごく印象深い一文があったこととそれをノートに記したことを思い出し、どうしてもその一文を正しく知りたくなった。

 
いつ読んだのかさっぱりわからないから、かたっぱしから過去のノートのページを繰った。


そうやっていると本来の目的をそれて、落書きをしたときの心情をなつかしく思い出したり、ヘンなメモにいやあな気分になったり、あっという間に時間が経過する。


ようやく目的の一文を見つけた。そうそう、これ。


「人間には自分が知っている以上のことを知らずして知ってしまう瞬間があり」、

これをときどき、背筋がすうっと凍るような感覚とともに思い出すことがあるのだった。


それは「知ってしまう瞬間」を経験したときだったり、「あ、知ってしまいそうだ」という予感にうちふるえて、目を覆ったり耳をふさいだりするときに、思い出す。


以前は知ることができるなら全部知りたい、という気持ちが強かったけれど、さいきんは違う。


知らないほうが幸福なままいられるのなら、そのままで。と思うことが多くなったように思う。弱っているのだろうか。それとも。


今日は世のなかはクリスマス。

イエスの存在を信じ、信じたい人間を愛しく思う、と言ったクリスチャンの友を思う。

体調もよいので、夜は娘とふたりで軽井沢高原教会に出かけて美しいイルミネーションを見ようか、と考えています。

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