■■中島みゆきと坂口安吾■■
2016/07/01
週末に、DVD「プロジェクトX」を観て、ここ数年、なんとなく三人で何かを観るときは「プロジェクトX」となっているのが、しぶいなあ、と思う。
テレビのない生活を始めてもう七年が経ち、私にとってはこのうえなく快適。
どうしても、全体的に受け身にならざるをえないあの感覚と暴力的な存在が嫌い。
ああ。そんなことを書こうとしたのではなかった。
さっき、座りっぱなしでこりかたまった身体をほぐすために、掃除をした。
そのとき、音楽が聴きたくなって、久々に中島みゆきをかけたのは、プロジェクトXのテーマソングを彼女が歌っていたからだ。
「大吟醸」というタイトルのディスク、「ファイト!」という歌がある。
何箇所かで、不意打ち。
「暗い水の流れに打たれながら 魚たちのぼってゆく 光っているのは傷ついてはがれかけた鱗が揺れるから いっそ水の流れに身を任せ 流れ落ちてしまえば楽なのにね やせこけて そんなにやせこけて魚たちのぼってゆく」
「ああ、小魚たちの群れきらきらと 海の中の国境を越えてゆく 諦めという名の鎖を 身をよじってほどいてゆく」
そ
して、リフレイン部分、
「ファイト! 闘う君の唄を 闘わない奴等が笑うだろう ファイト! 冷たい水の中を ふるえながらのぼってゆけ」
に、坂口安吾を探した。
もうぼろぼろになった文庫「堕落論」、名エッセイのひとつ「不良少年とキリスト」の命の何行かに逢いたくなった。
「生きることだけが、だいじである、ということ、たったこれだけのことが、わかっていない。
(略)生きてみせ、戦いぬいてみなければならぬ。
いつでも、死ねる。そんな、つまらぬことをやるな。
いつでもできることなんか、やるもんじゃないよ」
「しかし、生きていると、疲れるね。
かく言う私も、時に、無に帰そうと思う時が、あるですよ。
戦いぬく、言うはやすく、疲れるね。
しかし、度胸は、きめている。是が非でも、生きる時間を、生きぬくよ。
そして、戦うよ。
決して、負けぬ。
負けぬとは、戦う、ということです。
それ以外に、勝負など、ありゃせぬ。
戦っていれば、負けないのです。
決して、勝てないのです。
人間は、決して、勝ちません、ただ、負けないのだ」
こんなことを書いた人がいるのだ、とあらためて思う。
春とは言いたくない軽井沢。
もっとも嫌いな季節も、あとちょっとで終わるはず。
家にこもりっきりの毎日、活動的な人たちからは悲惨な毎日に映るかもしれないけど、書くモードに入りこめている日々は、私にとって、(苦しいけど)、好きな日々。
そして、戦っていれば、負けないのです。