◎Tango ブログ「言葉美術館」

◆心の空洞は埋まらない

 数日前に、内容は安っぽいドラマみたいなんだけど、私にとっては、とてもショッキングなことがあって、ほとほと自分自身の、人を信用し過ぎるバカなところにあきれ果てた。落ちこみを通り過ぎて笑えるほどのことだった。だから大したことないと思えた。2011年の春、そして2014年春の、あの死とぎりぎりのところにいた、あの体験と比べれば、たしかに、軽かった。

 なのに、その夜、というか明け方、悪夢を見た。久々に自分の叫び声で目を覚ました。枕がぐっしょりになるほどに泣いていた。絶望的な夢だった。でもその夢で私は、現実世界ではとうてい言えない、愛の言葉をおもいっきり、叫んでいた。相手の気持ちをおしはかって、言葉を飲みこんだり、言葉を選んだりしていなかった。それなのにその愛の言葉は相手には届かない。

 簡単に言えばそんな夢なんだけど、私は、その夢で、私自身の本心を知った。夢よりも、そのことのほうが絶望的だった。

 その夜はタンゴを踊った。タンゴを踊ることで、なんとかしたかった。だから、今週はいつもは仕事をする予定の曜日にもタンゴに出かけた。その時間は陶酔できるし、嫌なこと、そして悪夢からも少し離れていられるようだった。
 そして、嫌なことから逃れたいという想いがそうさせたのか、久しぶりに飲み過ぎてしまった。これが失敗だった。私はお酒を飲むと人恋しさが病的なまでにつのるということを、久々に体感した。

 そう、だからずっと、長い間お酒を禁じていたのに、タンゴへの耽溺が深まるにつれて、赤ワインを飲むようになっていたのだ。

 深夜なのに親友にラインをした。「ひとりの部屋で壁を相手に抱きつき泣いたわ。さびしい病発症中のあなたの愚かな友より」

 タンゴは心の空洞を埋める、って誰か有名なダンサーが言っていた。

 私はまだ未熟だからなのか、資質がないのか、どんなにどんなに、どんなに踊っても、心の空洞は埋まらない。

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