■人生の熱烈な瞬間 「イエーツ詩集」 ■
2016/06/30
好きな女性についての原稿を書いているけれども、ずっとつきあっていると、違うひとにふれたくなる。
さいきん、原稿に疲れると手を伸ばすのが「イエーツ詩集」。
以前にも、書いたことがある。
今日はこの詩集の訳者であり編者である加島祥造の文章を読んでいて、とても大切ななにかを見たように思った。
加島祥造はイエーツの詩の根源を語るキーワードとして
「人生の熱烈な瞬間において人が実感する思い」
をひろいあげている。
イエーツにとって人生の熱烈な瞬間の思いとは女性への愛慾の思いだったのだ。
彼は生涯いつも誰か女性を愛していた。
それは女好きといった生やさしいものではなくて、詩への愛とぴったり表裏をなすものだった。
イエーツには愛する女性がいなければ詩はなく、詩心を持たずに女性を愛することもなかった。
73歳まで生きたイエーツは最晩年、回春手術までしたという。
加島祥造はイエーツ晩年のエピソードで文章を終えている。
***
老年の彼は、ある日、実に美しい娘が部屋から出てゆくのを見て言った―‐
「お待ち!」娘はドア口で立ち止った。彼は言った。
「君がそんなに美しい姿で立っているのに――その君を愛せないなんて、ほんとに哀しい!」
高名な学者バウラが目撃したことだ。
こんなころし文句をマジメに言う老イエーツこそ愛すべく、そしてこういう彼の心を彼の詩のなかにさぐってゆくことが素晴らしいのだ。
***
人生の熱烈な瞬間。
そのとき、人が実感する思い。
そういったことがらについて考えることから遠ざからないような人生を私は、生きたい。