■■天使と娼婦■■
2016/06/30
テレビ番組の収録のなかで、ロセッティについて語り、そのなかでラファエル前派の画家たちの意識、ヴィクトリア朝のイギリスの女性観などについてもふれた。
つまり女性を「天使」と「娼婦」にわけて愛する男性の意識。
帰りの新幹線で「天使」と「娼婦」がなぜかあたまから離れなくなり、あれこれと思いを巡らせた。
たしか、アナイスの本のなかに、「娼婦より欲が深い」という一文があったな、と思いだして、帰宅してすぐに探した。
何度も書いている「インセスト」に、あった。
「私が欲しいのは躰の関係ではなく、そこに至る過程、ゲームなのだということ。ドン・ファンと同じだ。誘惑するゲーム、男の肉体のみならずその魂まで所有するという正気を逸脱したゲームを愉しんでいる。娼婦より欲が深い。」
アナイス・ニンは私にとっては、ぜったい他人なんかじゃない、というところまできてしまっている作家だけれど、この部分については、いまの私は共鳴しない。
共鳴するときもあったし、これからもきっとあるのだろう。けれど、いまは違うシーズンにいるように思う。ゲームはしたくない。
ぱらぱらっとページを繰って、アナイスワールドを楽しんで、今回はこの一文でにっこりと笑った。こういうあなたが大好きアナイス。
「私に感情というものがまったくなかったら、私は世界中でもっとも知的な女性になる」
絵はロセッティのリリス。