ブログ「言葉美術館」

■■草間弥生とヴィトン■■

2016/06/11

___1久しぶりに新宿の伊勢丹に出かけた。

ショー・ウインドウが草間弥生ワールドになっていた。

ルイ・ヴィトンとのコラボレーション。


娘が一緒で、彼女は私が買った草間弥生の赤いかぼちゃのストラップを携帯電話につけているので、よく知っていて、二人で「わあ」と声をあげた。


私は、ブランドが前面に押し出されているデザインのものは好まないけれど、これは欲しいなあ、と思った。

なんだかとっても嬉しかったからだ。


久しぶりに、草間弥生の自伝を取り出してきた。

これに関しては以前にも書いている。

草間弥生は文学者としても一流で、彼女の文章が私はとても好きだ。

今回読み返しても、心にささるところが、とても多い。

そのなかの一箇所を紹介する。


「芸術家を志している私は、理不尽な環境に打ち勝つということは追いつめられた立場に置かれた己れの苦しい情況に打ち勝つということであり、人間として生まれてきた故の試練であると思っている。

だから、私の全人格をもってそれに立ち向かいたい。

こういうことに巡り合ったことも、一つの人の世の運命であるから。(略)

大宇宙を背景にしても人間はしがない虫けらではないという畏敬の念を感じて、未来への心の位置を高めたい。

そのため、私は芸術をそれへの手段として選んだ。

これは一生をかけての仕事である。

私の心を、死んで百年の間にたった一人でもよい、知ってくれる人がいたら、私はその一人の人のために芸術を創りつづけるであろう

そんな思いで、私は絵画を描き、彫刻を作り、文章を書いているのである。」

「人間として生まれてきた故の試練」とか「未来への心の位置を高めたい」というくだりで、心がおおきくゆさぶられた。


目の前の困難から逃げることばかり考えているような人間は、こういう言葉に心がこんなにゆさぶられる。

すこしだけ、しゃんとしたようなかんじ。

弱さを誇ってはいけない、と自戒する暑い昼下がり。

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