■■『悲しい嘘』をついてますか■■
2017/02/08
古本屋さんで、背表紙のタイトルが目に飛び込んできて、手にとった。
『悲しい嘘』。
ちょうどアナイス・ニンの言葉、
「嘘の最低なところは孤独をつくりだすことね」
が頭の中を飛びまわっていたときだったからなのだろう。
10年くらい前に話題となった自伝的小説『シズコズ・ドーター』の著者のノンフィクション。
「神戸女学院付属中学に合格直後、最愛の母を自殺でなくす」
という著者紹介に冷たい汗が流れて、本を買うことにした。
最愛の母を自殺でなくした著者がその後、どのようにして作家になるまでの人生を生きたのか知りたかった。
いくつかの言葉が心に残った。
「結局、愛だけでは人の命はつなぎ止めておけない、人を不幸からは救いだしてあげられない」
「正しいことをしたからといって、まったく後悔しないですむとは限らない」
「くる日もくる日も、なんとかして嘘を本当にしようと必死になっていた母。
死を選んだのは、もう嘘をつくのがいやだったからよね……。
私に託された思いがあるとすれば、それは悲しい嘘を拒むこと、こどもの頃の沈黙に別れを告げること、真実だけを話すこと」
読後、自分の甘さが際立った、そういう本だった。
笑い合える嘘や、ちょっとしたいたずらは別として、みんなどのくらい「悲しい嘘」を、私自身の言葉でいえば「決定的な嘘」を、抱え込んで生きているのだろう。
嘘をつけばつくほどに孤独はふかまる。
覚悟を決めて孤独に沈潜してゆくか、それとも、私は孤独は嫌なのだと、真実の世界を生きるか。
その程度のことなら自分で選択できるはず。