■あなたの声を見つけなさい■
2016/06/11
うっとりするほどに美しい文章を書く人はけっして多くはない。
簡潔で、おおげさな形容がないのに細部までイメージできて、書き手の呼吸までもが伝わってくるような文章。
ひらがなと漢字のバランス、句点、読点の選び方。
そういうことすべてに気を向けて書いている人はけっして多くはない。
さいきん資料としての本ばかり読んでいて、美しい文章に飢えていたので、休憩しようと本棚を見渡して、須賀敦子の『塩一トンの読書』を手にとった。
ふわん、と吐息が出てしまった。
ほんとうに好きだ、この人の文章。
早すぎた死がほんとにほんとに残念でならない。
須賀敦子を「恩師」とするうらやましい作家、青柳祐美子さんが、最後にエッセイを寄せている。そこに、須賀敦子が(おそらく文章による創作を志す)生徒たちに対して、いつも言っていた言葉が書かれていた。
「Find your voice(あなたの声を見つけなさい)」
こころに染みるな。ゆり戻される感じがするな。
私の声は、たぶんまだ枯れていない。
そろそろ暗闇から抜け出してうたわなければいけない。そういう時期にきているはず。