■■水をもとめて必死に根を張る人■■
2016/06/09
ようやく家から這い出て、よろよろとタクシーにのり、仕事場への行き先を告げる。
タクシーの運転手さんにはいろんな人がいて、いつもそれぞれの人生を感じ取るので、ワンメーターなのに、すごく疲れたりする。
今日の運転手さんはお話好きの人。
ようやく雨が降りましたね、ダイコンが抜けなくて大変らしいですね、ほら、水不足で、水を求めてダイコンの根が四方八方に張り出すんだそうですよ、ダイコンも大変ですよねえ。
水がなくて、水を求めて、地中に根をあちこちのばして、水を得ようとするダイコン。そうしないと死んじゃうからね。生きることそのものの姿だよね、それって。ふいうちです、運転手さん。
こんな話で落涙したら不気味がられるから、私は言った。でも、水を豊富に与えられたダイコンより、強いダイコンってかんじですね、私はそれを食べたいです、強いダイコン、私、食べたいです。
ちゃんと考えて答えたのに、運転手さんは次の話に移っていた。お話がしたいだけの人なのかな。
ああ。人生は乾いた大地だわ。そして人間は水をもとめて必死に地中に根を張るダイコンなのよ。いのちを想う雨の朝。