ブログ「言葉美術館」

■■「アメリカン・ラプソディ」の毬谷友子■■

2016/06/09

75f5d424f79dbe5a1c42f7589778e9aeやっぱりこのひとはすごい。

休憩をはさんでの二時間、どっぷりとその世界に浸った。

毬谷友子を観に行った「座・高円寺」。

ガーシュイン。私の好きな時代、20世紀前半に活躍したアメリカの作曲家。

ロシア出身のユダヤ系移民としてニューヨークに生まれた天才は、38歳で脳腫瘍のため急逝する。

舞台にはほぼ中央にピアノが置かれ、左右に小さなカウンターテーブルがある。

それぞれのテーブルに斎藤淳演じるヤッシュ・ハイフェッツ(ガーシュインの友人)、そして毬谷友子演じるケイ・スウィフト(ガーシュインの恋人であり、自身も作曲家)、そしてピアノは佐藤允彦。

「アメリカン・ラプソディ」は「「ピアノと物語」シリーズの一つのようで、だから、朗読とピアノという、そんなシンプルなスタイルの舞台なのだけど、毬谷友子だからシンプルにはしない。圧倒的な存在感と、そして、話すときの声とは別人かと思うその深い歌声で、ガーシュインの世界を色濃く表現する。

ガーシュインの短い人生とその思想、表現したかったこと、それらが簡潔かつ選び抜かれた言葉で語られながら、ガーシュインの音楽を堪能できるという、とても私好みの舞台だった。

最後はしずかに終わったのに涙がうるさいくらいに止まらなかった。

パンフレットに談話スタイルで毬谷友子の舞台に対する想いがあった。

タイトルは、私の「ピアノと物語」。

その最後はこんなふうに結ばれている。

「けれども、舞台の空気を支配するのは圧倒的にガーシュインであって、音楽と言葉から、ジョージ・ガーシュインという主人公が舞台に浮かび上がってくる事でしょう。

ジョージ・ガーシュインの魂が降りてきているような、その存在を近くに感じられるような、そんな舞台になったらいいなと願っています」

そんな舞台でした。

私は舞台でほとんど毬谷友子から目を離さないんだけれど、今回は視線の片隅に、同じように、ずっと彼女を見つめている男性の姿があった。彼は彼女をどんな想いで見つめているのだろう。聞いてみたい衝動がつきあげた。

ひとりで行って、ひとりで観て、ひとりで珈琲を飲んで、舞台をかみしめて、あの奇跡の時間を愛おしんで、そして日常に戻る。

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