■■立ち腐れた棒杭■■
2016/06/09
濃霧のなかでどちらに向かって歩いているのか、どちらに向かって歩くべきなのか、まったくわからなくて、それでもうろうろとさまよってエナジーだけは消費してしまうような。
先週、これをどうにかしたくて自分の書棚にすがったけれど、出会いがなかったので、いつもの書店に出かけた。
誰のどういう本を探すというのではない、今の自分をどうにかしてくれそうな本を探す。
あちらこちら、さまざまなジャンルのところをめぐる。
タイトルを読む。
帯の文章を読む。
30分以上そうしていて、私は久々に自分が、「切実に本をもとめている人」をしていることに気づいた。
そして思った。
ああ、いくら活字離れが叫ばれようとも、人間のこのような切実な想いはきっと消えない。私は、今の自分みたいな人に届くような、そんな本を書きたい。
さて。
そんなこんなで買ったのが『人間の基本』。
信頼している作家の本だから迷いはなかった。ただ、構成・編集部というのが気になったけれど、そんなのどうでもいいや、と思えたのが帯の言葉。
「足場のない人は、人生を無駄にする。生き方を見つめ直そうとしている人へ――」
レジで、書店の人の「カヴァーはおかけしますか」という問いに首を横に振って、差し出された本を受け取って、私はしみじみと、現在の自分の状態を知った。
そして「はじめに」のラスト3行ですでに落涙していた。
***
私は卑怯者ですから、流れにさからうということもしないんです。
それでもそういう時に、ふと流れの傍に立って、半分立ち腐れのまま、川の中に立っている棒杭の姿に見とれることがあります。
この本の背景には、そんな光景があるのかもしれません。
***
目を閉じて、川の流れを想像する。
立ち腐れた棒杭はなんて美しいのだろう。
自らの姿と比較して、情けなくて、また泣けてきた。