◇おしらせ ブログ「言葉美術館」

■娘、竹井夢子の本「ぜんぶ体型のせいにするのをやめてみた」発売によせて

 

 本日2021年6月11日は娘の夢子の初の本、「ぜんぶ体型のせいにするのをやめてみた」の予約開始の日。Amazonで

 6月24日に全国発売。書店に並ぶのはこの前後となる。

 数日前に最終稿のゲラを読ませてもらった。

「ぜんぶ体型のせいにするのをやめてみた」は、彼女がダイエットを始めてから経験した喜びや悲しみ、苦しみ、そしてダイエット系インフルエンサーとしての喜びや悲しみ、苦しみ、そしていくつかの小さな事件をきっかけに徐々にダイエットの泥沼から抜け出してゆくようす、「美とは何か」を自分の頭で考え始めたようす、そして現時点での彼女の意見、想いが綴られていた。

 読み終えたとき、私はゲラを膝に置いたまま、深い感動のなかにずっしり。

 漫画には近くにいた人のひとりとして私も出てくるし、書いたのは娘だし、ダイエット真っ最中の彼女の苦しみも、そばで見ないふりをしながらも苦しみつつ見守っていた。

 だから完全な第三者として読めるはずはない。

 けれど、私に深い感動をもたらしたのは、娘が書いたからではなかった。

 私はこんなに苦しかった、こんな経験をした、そして立ち直ったんだよ、という「私を認めて認めて」の声はなく、「同じような苦しみのなかにいる人を、ひとりでもすくいたい」という、せつじつな著者の願いが、そこにあったからだ。

 その願いは、無謀とも思われた。無邪気すぎるとも思われた。

 けれど、いつだって、人の心を動かすのは、無謀と思えるほどにひたむきでせつじつな個人の願いなのだ。

 漫画で、文章で、描かれている彼女の体験は、赤裸々だ。ここまで書くか、と驚くほどに、ありのままを見せている。

 私が好きなジャン・マレーの言葉を思い出す。

「自分をさらけ出すこと、それが他の人の助けになりうるのだ。」

 こんなにさらけだして、そしてなぜさらけ出すかといえば、苦しんでいる誰かを助けたいから。

 であるなら、この本は、この本を必要としている人に届きさえすれば、その人をすくえないはずはない。

 ***

 ここからは、この場は私のブログということで、出版までのことを私なりに振り返ってみたい。

「ダイエットにとらわれない本を出したいと思う。でもね、ダイエット本は売れるけど、ダイエットにとらわれない本は売れないと思うんだよね」

 夢子が私にそんな話をしたのは、ひとり出版社「ブルーモーメント」を設立して、2冊同時刊行という超多忙な日々がひと段落した2020年の終わりころだったと思う。

「そうかなあ、私はそういうのを欲している人は少なくないと思うけど」

「うーん。まずはオードリーとマリリンに全力注がないと。それに大学在学中にシャネルも出したいし。仕事始まったらしばらくはブルーモーメントの活動ができなくなるから」

 私はそのときは何も言わなかったけれど、少し日にちが経ってから、彼女に言った。

「もう昔のことだよ、って言うかもしれないけど、いつだったか、やりたいことのひとつとして大学在学中に自分の本を1冊出版する、って言っていたじゃない? それ、すべきだよ。自分の出版社があることだし、再生版シャネルよりも、それを先に出すべきだと思うよ」

「でもあと3ヶ月しかない」

「夢ちゃんならできるよ、私はできないが」

 そんな会話をしてからわりとすぐに、大学在学中の出版に向けて彼女の執筆活動が開始された。それはすごい勢いだった。そのエネルギーちょっとちょうだい、って言いたいくらいに。

 ひと月くらいが経った。娘が私に言った。

「やっぱり、出版やめようと思う」

「なんで?」

「クオリティが低すぎる。商業出版できるレベルじゃない。大したこと書けてないし」

「それはないと思うけど」

「ぜんぜんだめなんだよ。6割くらいできたんだけど、読み返してみたら、だめだな、って思う」

「そっかあ。よかったら、読ませてくれないかな?」

 6割くらいの段階のをざっと読ませてもらった。これは出版すべきだと私は思った。

 数日後、私は娘に提案した。

「あなたは、自分が自分が、っていうタイプじゃないからね、誰かをプロデュースするのは得意だけど、自分のことはできない。ということがまずあってね。あとは、自分の書いたものを自分で編集、出版、営業って、どう考えても無理があるよ。私のことなんか例に出しても参考にはならないと思うけど、だいたいの原稿書き上げてから出版するまで、3回くらいは原稿焼き捨てたくなるよ。くだらないものに思えてね、またゴミを制作してしまった、ってね。そんなとき、いつだって助けてくれたのは編集者さんだったよ。そんなことない、いい本になりますよ、って言ってくれる人がいなかったら、最後まで成し遂げられていないと思う。だから夢ちゃんにも編集者が必要なんだと思う。いったん、よく考えて、その気になったら企画書を作って持ちこみするのがいいと思う」

 プロの編集者が出版したいと思ったなら、その段階で、彼女の逡巡はひとつ消えるだろうと思ったからだ。

 そしてその気になって原稿を持ちこみ、今回の出版に至る。

 いま彼女は出版直前の「例の状態」にいる。例の状態、って私が出版直前にいつも陥る状態なのだが、私ほどひどくなくても、似た状態なのだと思う。

 読んだ人の反応が気になる。アンチコメントが殺到したらこわい、ぜんぜん売れなかったらどうしよう、もう、なんてことをしようとしているんだ、出版なんかやめてしまいたい。(←これは私の場合)

 娘はここまでではないかもしれないけれど、似た状態にあることはなんとなくわかる。

 というわけで、特に出版間際、創作者としての私を支えてくれている言葉を贈りたい。

「おまえの行動と作品が、万人に愛されることがかなわないのなら、少数の人間を満足させよ。多くの人間に愛されるものは、ろくでもないものだ。」(シラー)

「私の仕事を発見してくれるであろうどこかにいる誰かの孤独と私の孤独とのあいだには真のコミュニオンがある。」(メイ・サートン)

***

 

*予約してくださったら嬉しいです。

  *竹井夢子のInstagramhはこちら

 

-◇おしらせ, ブログ「言葉美術館」