◎62本目『こわれゆく世界の中で』
【あらすじ】
ロンドンの都市計画の仕事をしているウィル(ジュード・ロウ)は、恋人のリヴ(ロビン・ライト)と彼女の娘と生活を共にしていましたが、ふたりの間には少し距離が生まれていました。
ある日、オフィスに窃盗団が入ったことがきっかけで、アミラ(ジュリエット・ビノシュ)と出会い…。
路子
観終わった後にモヤモヤしてしまったので、話したい(笑)
自分なりに噛み砕いた上で、意見がある感じ。
ビノシュが出演している作品だけれども、タイトルで戦争の話だと思っていたから、ずっと観ていなかったの。
じゃあ初めてですか?
りきマルソー
路子
そうなの。
ウィルとリヴの神経症的な夫婦の関係を面白いと思いながら観ていたけれど、娘のビーはずっとふたりの娘だと思ってた。リヴの連れ子だったのね。
ウィルとリヴの神経症的な夫婦の関係を面白いと思いながら観ていたけれど、娘のビーはずっとふたりの娘だと思ってた。リヴの連れ子だったのね。
私も。結婚していないけれど、子どもはいるみたいな感じなのかと思っていました。
ウィルは、リヴとビーの親子関係の中に入り込めないのが悩みなんですよね?
ウィルは、リヴとビーの親子関係の中に入り込めないのが悩みなんですよね?
りきマルソー
路子
「檻のように思う」という表現の仕方をしていたね。
入りたい、入りたくないという葛藤の中にいるんだと思う。
入りたい、入りたくないという葛藤の中にいるんだと思う。
ビーが心を開いていなかったから、ウィルはそう思っているんですか?
りきマルソー
路子
精神障害を抱えてるビーを中心とした生活と、その生活に精神を病んでしまっているリヴ。息苦しかったのかな。
娼婦の人がくれたCDを車の中で聴き始めてから、ウィルとビーの関係性が変化して、他人というよりは、親子として接するようになりましたよね。
りきマルソー
路子
そうね。今後ウィルに対して心を開いていくはずよ。
路子
ビノシュはいつ登場するのかと楽しみにしていたのだけれど…主演ではなかったのね。
映画のポスターでは、ビノシュが主役みたいに見えますよね。
りきマルソー
もうちょっとサラエボの話が突っ込んで描かれていたら、ビノシュが演じていたアミラのバックボーンにも深みが出ますよね
例えば、アミラがサラエボに旦那を置いて逃げたのは、旦那の浮気も理由のひとつなんですよね。そういったことが、ちょっとした台詞では語られるけれど、深くは突っ込まれない。
例えば、アミラがサラエボに旦那を置いて逃げたのは、旦那の浮気も理由のひとつなんですよね。そういったことが、ちょっとした台詞では語られるけれど、深くは突っ込まれない。
りきマルソー
路子
ビノシュはこの役をやるために、わざわざサラエボに行ったのよね。そこまで行って、取材をしているのに…。
それを活かせていないですよね。
りきマルソー
路子
ビノシュよりもロビン・ライトの印象の方が強かった。ビノシュも好きだけれど、ジュード・ロウやロビン・ライトも好き。特に、ロビン・ライトは『50歳の恋愛白書』や『美しい絵の崩壊』も観ているし、『ハウス・オブ・カード 野望の階段』という連続ドラマも、彼女目当てだった。
『美しい絵の崩壊』は、私も観ました。
りきマルソー
路子
あれ好き。
路子
今回の映画のウィルの役柄はちょっと軽かったよね。
ストーリーを通して、軽薄な男でしたよね。
りきマルソー
路子
社会敵には成功していても、中身はいちばん子どもだったなあ。
路子
まさかこれ、こういう風に終わるんじゃあるまいな、と思っていたら、最後は大円団だったわね。
ジャンプハグしてハッピーエンドのことを言っていますか?(笑)。
りきマルソー
路子
はい(笑)。
ああいう展開になる?
ああいう展開になる?
説得力がないですよね。
りきマルソー
路子
うまくいっていないカップルがいました。モヤモヤしていた夫が、外に好きな人を作りました。だけど、やっぱり夫婦の関係の方が大切だと思いました。他の人と関係を持ったと告白すると、全てをを分かった上で受け入れてくれたので、僕はそちらに戻ります、ではさようなら…みたいな話でしょう?
早送りでダァーって過ぎていった印象ですが、裁判とジャンプハグシーンの間に、本当はまだひとつ話が続く感じですよね。アミラがなかったことになっているみたいで、軽薄な男の話にしか思えなくなっちゃいます。
りきマルソー
路子
そうなの。アミラはふたりの間の刺激剤だったということ?
関係を元に戻すための?
りきマルソー
路子
アミラは、ウィルとリヴが元に戻るためのきっかけになったにすぎない感じでしょう? そういう展開のドラマや映画はたくさんあるけれど…。
路子
一般的に、恋愛関係において変化を求める人は少ない。だから何か問題が起きても、夫婦間のことはキープしようとするの。夫婦の関係を壊して、新しい関係の方へいくというのは、あまり多くはないと思う。
愛人を外に作っていたことがバレたことで 改めて配偶者の大切さが分かる、みたいなのを現実世界で実際にたくさん見ているから、わざわざ映画で見なくてもいいと思ってる。
愛人を外に作っていたことがバレたことで 改めて配偶者の大切さが分かる、みたいなのを現実世界で実際にたくさん見ているから、わざわざ映画で見なくてもいいと思ってる。
路子
ところで、最後はまとまるこのカップル、ウィルとリヴは愛し合ってると思う?
愛し合ってはいたけれど、目に見えないくらいの距離感は生まれていた。でも、お互い昔のような関係に戻りたいし、歩み寄りたいとも思っている。
りきマルソー
路子
うん、うん。
でも、ウィルとリヴは価値観というか…何かズレているのよね。
でも、ウィルとリヴは価値観というか…何かズレているのよね。
出身国の違いでって言っていましたよね。スウェーデン人はなんとかでみたいな。
りきマルソー
路子
そういうのもあると思うけれど、そもそもふたりが惹かれあっている理由が見えなかったし、描かれていなかった。
ふたりで車に乗っている時に「出会った頃を思い出す」と、話を始めますけど、その話の中にも強烈に惹かれ合う何か、みたいなものは描かれていなかったですもんね。
りきマルソー
路子
リヴはセラピーに通っているでしょ。そのこともウィルはパートナーであるのに知らない。それで、アミラと関係をもつ。
路子
リヴはそれを受け入れて、パートナーの愛人であるアミラを助けるわけでしょ。それだけで、ウィルとリヴの関係って修復できるものなの? 私にはわからない。
路子
もちろん調停の場で嘘をついて、パートナーの愛人アミラを助けるあたりは、リヴの寛大さが気持ちよかったけど、それからふたりで車に乗って、そこでリヴがキレるでしょ。そうよそうよ、ここでふたりは戦わないとだめよ、って期待したのに、あっという間にジャンプハグシーンになっちゃった。台無しだわ。ほんとは頭からっぽ?って思っちゃう。
リヴがそれまでに我慢して溜め込んだエネルギーって、相当なものですよね。それを考えると、車を降りた後の2、3分のやり取りで仲直りするとは思えない。
りきマルソー
路子
そうよね!
アミラ親子もサラエボに行って、ハッピーエンドで暮らすでしょう、みたいで、そんなのは都合がよすぎる!
りきマルソー
路子
ラストのシーンで映画全体が陳腐になってしまったね。残念。私も気をつけないと(笑)。
~今回の映画~
『こわれゆく世界の中で』 2006年イギリス・アメリカ
監督:アンソニー・ミンゲラ
出演:ジュード・ロウ/ジュリエット・ビノシュ/ロビン・ライト/マーティン・フリーマン/レイ・ウィンストン