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▪️新刊『彼女たちの20代』発売&サイン会のご案内


 

 新刊『彼女たちの20代』が発売されます。

*書店に並ぶのは6月17日ころになりそうですが、「ブルーモーメント」では現在、特典付きのオーダーを受け付けています。

 サイン入り、サインなし、かわいいギフトバッグつき、とかいろんな組み合わせで選べそうです。

 こちらからどうぞ。ブルーモーメントオンライショップ。

*また、6/15-21、渋谷のスクランブルスクエアにて、ブルーモーメントのPOP-UPストアが開催されます。こちらでも新刊、そのほかブルーモーメントから刊行されている本が販売されます。
私は6/18(日)16時から18時までお店にてサイン会を行いますので、お出かけくださいませ。

 詳細はこちらです。ブルーモーメントPOP-UPストア。

 というわけで、発売記念の記事を書きました。

*『彼女たちの20代』発売によせて*

『彼女たちの20代』。見本を手に取ったとき、最初に頭に浮かんだことは「ほんとに完成したんだ、私、書き上げたんだ」という想いだった。

 今年に入ってすぐ、いいえ、『ピカソの言葉』がほぼ手を離れてからの1月の終わりころから、一息つくこともなく、すぐに執筆を始めて、途中、なんども「刊行予定日を延期してほしい」と娘に相談して、そのたびに、励まされたりあれこれされて、書いて書いて書くだけの4カ月を過ごして、いま、完成した本を手に、なんだかほんとうに泣きそうになっている。

 この本を書くにいたったきっかけを「はじめに」にから。

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「有名な人たちが二十代をどんなふうに生きていたのか知りたい。いままで研究したり書いたりしてきた女性たちの二十代をテーマにした本がすごく読みたいんだけど…」

 いままさに二十代を生きている彼女からそんなリクエストがあったのは昨年、早春のことでした。彼女は出版社ブルーモーメント代表であり、私の娘でもある竹井夢子です。

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 娘からのリクエストだったわけだ。彼女がそのリクエストをするにいたった経緯は、ブルーモーメントの本の愛読者の方々が楽しみにしているらしい「ごあいさつ」(本にはさんでる小冊子、娘の想いが書かれたもの)にある。

 そして、これは「はじめに」に書いてはいないことだけれど、彼女からのリクエストうけたとき、私がまず思ったこと、そして彼女に言ったことは「それはすごくおもしろい本になると思うし、私だって読んでみたい。でも、でも、書くとなるとものすごくたいへん…」だった。

 10人から15人くらいの人たちをとりあげるとする。ひとりあたりのページ数は少ないにしても、その人の20代に焦点をあてて、そこから私が何を感じとったか、「彼女」の人生のなかで彼女の20代はどんなシーズンだったのか、そんなことを考察するということは、それぞれ一冊分の本を書くのに等しいエネルギーが必要だからだ。いままでに書いたことのある人たちについては、その人生の流れのようなものが私のなかにあるにしても、はじめての人は、一からのスタートとなる。

 本書には、書き始めてやめた人たち、書き上げてみて、自分が書いたものに納得できないからと、取り下げた人たちを除き、生き残った13人がいる。

 草間彌生
 カトリーヌ・ドヌーヴ
 フランソワーズ・サガン
 ヴィヴィアン・ウエストウッド
 オードリー・ヘップバーン
 ココ・シャネル
 マリー・クワント
 ダイアナ
 マドンナ
 オノ・ヨーコ
 フリーダ・カーロ
 ジャクリーン・ケネディ
 マリリン・モンロー

 順番は最初の読み手である娘の直感で決めてもらった。一度、生年順で並べてみたものの、なにかしっくりこなかったからだ。

 ブルーモーメントから出す本はこれで6冊目となるけれど、今回ほど、編集者でもある娘と、内容をめぐってやりとりしたことはなかったように思う。

 私は、難しい内容をわかりやすく、わかりやすく本質を描き出す、を心がけ、目指しているのだけれど、それでも、「難しい」「この人の名前、知らない人も多いと思う」「説明が欲しい」といった指摘があった。読者層として20代の人たちがやはり、あるわけだから、そこは受け入れ、たとえば「ビートルズ」にもひとこと説明を入れるなどしたことは、なにかとても印象的な体験だった。

 そして本文、13人を書き上げて、力尽きそうなところに、もうひとつ、重大な仕事があった。「おわりに」で私自身の20代についてふれることになっていたのだ。 

 これにずいぶん時間を費やした。書き始めたら膨大なページ数となってしまい、いったん寝かせて、もう一度手をいれて、それでもまったく納得できなくて、なぜなら自分のことならいくらでも知っているわけだから、膨大なエピソードのなかから何をピックアップするのか、そこで語りたいことは真実何なの?と自分に問いただす作業が、ことのほかきつかった。

 それでも、2023年5月2日、57歳の誕生日の朝、なにかが突然おりてきて、パソコンに向かい、「おわりに」を一気に書き上げた。書いたものを声に出して読みながら、涙があふれてくるという、いつもの「おわりに」や「あとがき」で起こる現象があったことで、私はこれを完成稿とした。あの瞬間、頭の奥がしんとしずまっている、なんとも言い難い感覚は、本を書くなかで、私が愛している瞬間のひとつ。

 書いている最中なら、別の愛している感覚はいくつかある。書いている対象との一体感を得たとき、書いている対象の言いたいことが明確に私に伝わってきていると感じられるとき、これは私でなければ見えないことだわ、とみょうな確信があるとき、などなど。

 それらがあるかぎり、どんなに大変でも、書いているときはもういやー、むりー、げんかいー、と深夜ひとりの部屋で頭をかかえて嘔吐しそうなほどになっても、涙しても、私は書き続けるのだと思う。

 校閲と校正をいつものように親友の平林力さんとロビーにお願いした。

 校正を終えたのち、平林力さんからメッセージが届いた。

「実は14人の20代の物語なんだって、おわりに、を読んで思いました。14人目は路子さん」

 落涙。私の仕事をうけとめてくれている人がいる。

「はじめに」からふたたび引用する。

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 いまでこそ有名で、その人生を知りたいと思わせる彼女たちですが、最初から有名であったわけでは、もちろんありません。
 そんな彼女たちの二十代、まだ自分が何者かわからずにいたシーズン、「はじめての経験」だらけだったシーズンに焦点をあてた本…。

 彼女からのリクエストを受けて、それを私は書きたいか、書けるか、あれこれ考えながら過ごしていたある日の夕刻、モノクロのイメージがふと浮かびました。
 書店をさまよう二十代半ばの私の後ろ姿です。

 いまの自分に響く本、生き方を考えるきっかけになる本を探して、なかなかなくて、それでも何かないかと、あのころ私は毎日のように書店に出かけ、長い時間をそこで過ごしていたのでした。
 すこし途方に暮れたようなモノクロの後ろ姿に、ああ、と思わず声がもれました。
 あのとき、私が求めていたのは、まさに彼女がリクエストしている本だったのです。
 書きたい、と思いました。 

 彼女たちは二十代をどのように過ごしたのか。
 何を考え、何に悩み、何に苦しみ、どのようなことに幸せを感じ、どのような出会いがあり、そして、どのように生きたいと願っていたのか。

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 そして「はじめに」のむすびは、「あなたは彼女たちの二十代に何を想うのでしょう」と語りかけ、二十代を過ぎた人に向けて、

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 すでに二十代というシーズンを終えた人は、自分の二十代をふり返り、「もしかしたら、あのときのあの経験が、いまの自分に何かを語りかけているのではないか」、そんな思索の時間をもつのかもしれません。

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 と書いたのだけど、本書執筆期間の私がまさにこれだった。そのことは「おわりに」に書いた。

 

 …そんなかんじで、私のブログを訪れてくださっている人たちは二十代を終えている人たちが多いのでは、と想像していますが、そのような方々にも何かが届けられるのではないか、と思っています。

 お読みいただけたら嬉しいです。 

 

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